泊原発運転差止訴訟札幌地裁判決に対する会長声明


札幌地方裁判所は、本年5月31日、北海道電力株式会社に対し、北海道電力泊原子力発電所(以下「泊原発」という。)1号機から3号機までにつき、運転差止めを命ずる判決(以下「本判決」という。)を言い渡した。


福島第一原子力発電所事故後、原子力発電所(以下「原発」という。)の安全確保に問題があるとして民事訴訟又は仮処分において運転差止めを認めた事例はこれまで6例あるが、本判決は初めて、津波に対する安全性の基準を満たしていないことを理由として、原発の運転差止めを命じたものであり、その意義は大きい。


当連合会は、2013年の第56回人権擁護大会において、原発の再稼働を認めず、できる限り速やかに廃止すること等を内容とする→決議を採択した。また、2014年の第57回人権擁護大会においても、行政庁が依拠する特定の専門的技術見解を尊重して原発の安全性を判断する方法を改め、今後は、科学的・経験的合理性を持った見解が他に存在する場合には、当該見解を前提としてもなお安全であると認められない限り原発の設置・運転を許さないなど、万が一にも原子炉等による災害が発生しないような判断枠組みが確立されること等を求める→宣言を採択した。


本判決は、提訴から10年、原子炉の変更許可申請から8年半を経てもなお、泊原発の特に津波に関する安全性に関して主張立証を終える時期の見通しが立っていないことを受け、原子力規制委員会の結論を待つことなく審理を終結し、口頭弁論終結時において現在設置されている防潮堤について地盤の液状化等のおそれがないことの説明がなされておらず、津波に対する安全性を欠いていると判示したもので、当連合会の決議・宣言等と同様の問題意識に立ったものとして評価できる。


当連合会は、本判決を受け、原子力規制委員会に対して、最新の知見に照らし津波対策等が不十分な原発の運転を認めないことはもちろん、地震・火山・避難対策等に関する基準をこれまでの住民勝訴判決や当連合会の指摘を踏まえて徹底的に強化するよう求める。また、政府に対しては、従来の原子力に依存するエネルギー政策を改め、できる限り速やかに原発を廃止し、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させるとともに、これまで原発が立地してきた地域が原発に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを強く求めるものである。 



 2022年(令和4年)6月8日

日本弁護士連合会
会長 小林 元治