伊方原発差止仮処分広島高裁2020年1月決定に対する会長声明



広島高等裁判所(以下「広島高裁」という。)は、本年1月17日、四国電力株式会社に対し、伊方原子力発電所(以下「伊方原発」という。)3号機の原子炉について、周辺住民の人格権侵害に基づき、運転の差止めを命じる仮処分決定(以下「本決定」という。)を言い渡した。


伊方原発は、2017年12月にも広島高裁より運転差止仮処分決定が出されていたが、2018年9月25日、同高裁により同決定が取り消され、同年10月27日に再稼働していた。現在は定期検査のため停止中で、本年4月27日に営業運転に入る計画だったが、運転再開に先駆けて、二度目の運転差止仮処分決定が広島高裁によりなされたものである。


福島第一原子力発電所事故後、原子力発電所(以下「原発」という。)の安全確保に問題があるとして差止めを認めた事例としては5例目となるが、本決定は、地震・活断層の影響評価及び火山噴火規模の可能性の双方に関する争点について、高等裁判所において初めてその危険性を認めたものであり、その意義は大きい。


当連合会は、2013年に開催された第56回人権擁護大会において、原発の再稼働を認めず、できる限り速やかに廃止すること等を内容とする決議を採択した。また、2014年に福井地方裁判所が大飯発電所3、4号機の運転差止めを命じる判決を言い渡した際、これを評価する会長声明を公表し、同年の第57回人権擁護大会においても、行政庁が前提としない科学的・経験的見解をも司法判断の前提とすること等を求める宣言を採択した。


本決定では、「ある問題について専門家の間で見解が対立している場合には、支配的・通説的な見解であるという理由で保守的でない設定となる見解を安易に採用することがあってはならない」と判示した点が重要である。本決定は、この考え方を踏まえ、活断層の影響評価と、火山噴火規模の評価の2点で、事業者及び原子力規制委員会の評価に不十分な点があったと指摘する。まず、活断層については、伊方原発の近傍にある中央構造線断層帯について、事業者が想定するよりも近い位置に存在する可能性があるという専門家の見解があることを踏まえ、より慎重な評価が求められるのに、これを行っていないとした。次に、火山についても、巨大噴火の可能性を否定できないという複数の専門家の見解があることを踏まえ、少なくとも巨大噴火に至らない規模の噴火を考慮しなければならないところ、これを行っていないとした。このような考え方は、当連合会の第57回人権擁護大会宣言とも基本的認識を共通にするもので、評価できる。


当連合会は、四国電力株式会社に対し、本決定を尊重することを求めるとともに、政府に対して、本決定を受けて従来のエネルギー政策を改め、できる限り速やかに原発を廃止し、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させること、及びこれまで原発が立地してきた地域が原発に依存することなく自律的に発展できるよう、必要な支援を行うことを強く求めるものである。


 2020年(令和2年)1月20日

日本弁護士連合会
会長 菊地 裕太郎