オスプレイの普天間基地配備の中止等を求める会長声明

米国政府は、来る10月にも普天間基地に、垂直離着陸輸送機MV-22オスプレイ12機を配備しようとしている。配備後のオスプレイは、沖縄県内だけでなく、本州以南の6つの低空飛行訓練ルート等でも訓練を行うことが予定されている。



沖縄県においては、沖縄県、県内全市町村がその配備中止を強く求めており、9月9日には沖縄県民大会が予定されている。配備反対は、まさに沖縄県民の総意となっている。オスプレイ配備反対の声は、陸揚げされた岩国基地はもちろん、低空飛行訓練が広く行われる他の府県にも広がっている。



1 オスプレイは、開発段階から重大事故を繰り返し、量産体制に移行した後も事故が絶えず、ごく最近も、本年4月モロッコでの訓練中に墜落し、6月にもフロリダ州で訓練中に墜落して乗員が死亡・負傷し、7月にはノースカロライナ州で民間空港に緊急着陸している。2006年からの5年間で58件の大小の事故が発生していることが、米軍資料で明らかになっている。



そもそもオスプレイは、オートローテーションの機能の欠陥や、回転翼機モードと固定翼機モードの飛行モードの切替え時の不安定さなど、専門家から構造上、重大な危険をはらんでいると指摘されている。



普天間基地は、宜野湾市の市街地のただ中に位置し、ひとたび墜落等の事故が起きれば大惨事に至る可能性が高く、「世界一危険な飛行場」と言われている(2010年7月29日福岡高裁那覇支部判決)。現に2004年8月、大型ヘリが沖縄国際大学構内に墜落する事故が発生し、その危険性は現実のものとなった。その普天間基地に危険なオスプレイを配備することは、周辺住民の生命・身体の安全を無視するものとして許されるべきものではない。



ところで、オスプレイが訓練を予定している本州以南の6つのルート等は、日米地位協定に基づく提供施設・区域ではない。提供施設・区域以外の日本の国土で日本政府が米軍に訓練を行わせることには、日米地位協定上も大きな問題がある。



しかも、森本防衛大臣は、地上約60メートルという低空で飛ぶ場合があることを国会答弁で認めている。これは、航空法が定める最低安全高度(人口密集地300m、それ以外150m)を大幅に下回るから極めて危険であるうえ、日米合同委員会が1991年1月に発表した「在日米軍による低空飛行訓練について」における在日米軍は日本の航空法により規定される最低高度基準を用いているとの確認にも反するものである。



さらに、オスプレイの配備については、事故の危険以外にも、騒音や回転翼によって発生する強い下降気流などによる環境への悪影響が強く懸念されている。



オスプレイのホバリングやエンジンテストの騒音は従来のCH-46よりもかなり大きく、基地周辺住民への騒音被害が深刻になり、低空飛行訓練ルート周辺の広範な地域での騒音問題等も強く懸念される。さらに、希少生物の生息条件等の自然環境への重大な悪影響を及ぼすことも危惧される。



よって、当連合会は、米国政府に対し、オスプレイの普天間基地への配備の中止を求める。



2 以上に加え、日本政府は、憲法が国民に保障する基本的人権、とりわけ、生命・身体・日常生活等を害されることなく平和のうちに安全に生存する権利(憲法前文、9条、13条など。第40回人権擁護大会「国民主権の確立と平和のうちに安全に生きる権利の実現を求める宣言」)を確保する責務を、国民に対して直接負っている。そのために、米国政府に対して必要な措置を求めることは、日本政府の国民に対する責務である。



この問題の根底には、米軍について、日米地位協定上、航空法の多くの条項の適用が除外されるなど、我が国が主体的に主権の行使を行うことが制約されているという同協定上の不平等かつ不合理な制度上の問題がある。したがって、当連合会が前から求めているように(1976年10月9日第19回人権擁護大会決議など)、日米地位協定の抜本的見直しを急ぐ必要がある。



よって、当連合会は、日本政府に対し、米国政府にオスプレイの普天間基地への配備の中止を求め、日米地位協定を直ちに抜本的に見直すことを求めるものである。

 

2012年(平成24年)9月7日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司