「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」の成立に当たっての会長声明

本年3月23日、「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律案」が参議院において全会一致で可決の上、成立した。まずは、本特例法制定に向けて尽力された各政党、国会議員の方々、その他の関係者の方々に敬意を表したい。



この特例法は、東日本大震災の被災者が、裁判その他の法による紛争の解決のための手続及び弁護士等のサービスを円滑に利用することができるよう定められたものである。



これまでは、被災者がその権利の回復を求めるために弁護士に依頼をしようと考えても、既存の民事法律扶助制度の下では資力要件等の制約があり、それが弁護士へのアクセス及び法的問題の解決の大きな障害となっていた。



当連合会は、このような問題について、昨年5月27日の第62回定期総会において採択された「東日本大震災及びこれに伴う原子力発電所事故による被災者の救済と被災地の復旧・復興支援に関する宣言」の中で、被災者があまねく法的支援を受けることができるようにするための民事法律扶助制度の拡充を求めた。また、同年12月4日に「東日本大震災等の被災者への『法的支援事業』特別措置法の制定を求める会長声明」を発表し、東日本大震災等の被災者支援のため、(1)資力で被災者を選別しない法的支援事業の創設、(2)民事裁判に限定されない柔軟な支援の実現、などを内容とする「法的支援事業」特別措置法の制定を求め、その実現に向けた取組を行ってきた。さらに、被災地の自治体や弁護士会からも被災者の法的支援に対応する法整備を求める要望が寄せられ、本特例法の成立が期待されてきたところである。



この特例法は、東日本大震災に際し災害救助法が適用された市区町村の区域における被災者を対象として、日本司法支援センター(以下「法テラス」という。)が実施する民事法律扶助業務に付随する形で「東日本大震災法律援助事業」を創設したものである。そして、従来の民事法律扶助事業と比べ、主に以下の3点について、要件緩和等が実現した。



(1) 東日本大震災法律援助事業においては、援助を受ける被災者の資力の状況を問 わないものとする。



(2) 従来の民事法律扶助事業に加え、裁判外紛争解決手続(原子力損害賠償紛争解 決センターへの和解仲介申立てや個人債務者の私的整理ガイドラインに基づく債 務整理手続)や行政不服申立手続の準備・追行(民事裁判等手続に先立つ和解の 交渉を含む。)を援助の対象とする。



(3) 援助を受ける被災者に係る民事裁判等手続その他の手続の準備・追行がされて いる間、立替金の償還・支払を猶予するものとする。


当連合会は、被災地の一日も早い復興のために、この「東日本大震災法律援助事業」が広く被災者の方々に利用していただけるよう、法テラスと連携して、全力を尽くす所存である。


また、被災者の方々におかれては、法的問題を抱え込まずに、自らの権利回復のためにも、まずは弁護士に相談いただき、積極的に本制度を利用していただくよう、お願いしたい。

 

2012年(平成24年)3月23日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児