環境省「局地的大気汚染の健康影響に関する疫学調査-そら(SORA)プロジェクト-」結果公表に関する会長談話

本年5月27日、環境省は、幹線道路沿道における自動車排出ガスの健康影響に関する大規模疫学調査(以下「SORAプロジェクト」という。)の結果を公表した。

同調査は、1988年の公害健康被害の補償等に関する法律の第一種指定地域解除の際に、「主要幹線道路沿道等の局地汚染については、その健康影響に関する科学的知見が十分でない現状にかんがみ、調査研究を早急に推進すること」との国会附帯決議をふまえて、遅ればせながら2005年度に開始されたものである。


同調査の中心をなす学童コホート調査(同一の性質を持つ集団を対象にした追跡調査)では、予め十分に精査された適切なデザインによる十分な対象数を確保した疫学調査により収集されたデータに基づき解析した結果、EC(元素状炭素)及びNOx(窒素酸化物)推計曝露量を指標とした自動車排ガスへの曝露とぜん息発症との間に関連性が認められるという重要な結果が得られている。


一方、東京都は、東京大気汚染訴訟に関する和解を受けて、2008年8月から気管支ぜん息患者への医療費助成制度を創設し、2011年4月末現在、認定総数は6万人余にのぼっており、同制度により患者の経済的負担の軽減のみならず症状改善も含む大きな効果がもたらされている。


これをふまえて東京都議会は、2011年3月11日、全会一致で国の責任において、大気汚染による健康被害に対する総合的な対策を求める意見書を提出しているところである。


当連合会は、既に2004年8月20日付け「自動車排ガスによる健康被害の救済に関する意見書」及び2006年11月22日付け「自動車排ガスによる健康被害の救済に関する要請書」で、国に対し新たな救済制度創設を要請しており、2007年8月8日付け「東京大気汚染公害裁判の和解成立を受けての会長談話」においても国に対し抜本的な救済制度を創設すべきと提言してきた。


以上から、今回のSORAプロジェクトの結果をふまえ、国において、自動車排出ガスにより健康を害された全ての公害被害者を救済するため、当連合会の前記意見書等に沿った、汚染原因者の費用負担による医療費のみならず障害補償費等の給付を含む新たな救済制度を早期に創設されるよう強く求めるものである。




2011年(平成23年)6月24日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児