電磁的記録提供命令の創設を含む刑事訴訟法等の改正に当たり、プライバシーの権利等を保護するための修正を求める意見書


icon_pdf.gif意見書全文 (PDFファイル;189KB)

2024年3月14日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

日弁連は、2024年3月14日付けで「電磁的記録提供命令の創設を含む刑事訴訟法等の改正に当たり、プライバシーの権利等を保護するための修正を求める意見書」を取りまとめ、同月15日付けで法務大臣宛てに提出しました。


本意見書の趣旨

情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備に関する刑事訴訟法等の改正に当たっては、捜査機関による電磁的記録の収集に関し、プライバシーの権利を始めとする市民の権利を保護するため、その内容を次のとおり修正すべきである。


1  電磁的記録の提供を受け又は電磁的記録媒体を押収するに当たっては、デジタル社会における個人情報保護の必要性に鑑み、できる限り被告事件又は被疑事件との関連性のない個人情報を収集することとならないよう、特に留意しなければならない旨を明記する。


2 自己の情報を取得された市民に不服申立ての機会を保障するため、

  (1) 他人から委託を受けて電磁的記録を保管する者からその提供を受けたとき又はその記録された媒体を押収したときは、当該他人に対し、その旨を通知し、目録を交付しなければならないものとする。

  (2) 電磁的記録提供命令を受けたこと及び提供を命じられた電磁的記録を提供し又は提供しなかったことを漏らしてはならない旨の命令について、漏らしてはならない期間を法律上制限する。


3 違法に収集された情報が消去されるようにするため、

  (1) 電磁的記録提供命令が取り消されたときは、記録させた電磁的記録についてはこれを消去し、移転させた電磁的記録については当該命令を受けた者に対しこれを移転し、かつ当該電磁的記録を複写した電磁的記録を消去しなければならないものとする。

  (2) 電磁的記録媒体の差押処分が取り消されたときは、当該電磁的記録媒体に記録されていた電磁的記録を複写した電磁的記録を消去しなければならないものとする。


4 被告事件又は被疑事件との関連性のない個人情報を含む電磁的記録については、消去を請求することができるものとする。


5 自己負罪拒否特権(憲法38条1項)が保障されていることを踏まえ、

  (1) 電磁的記録を提供することが自己に不利益な供述をすることとなるときは、その提供を拒む行為は罰しない旨を明記する。

  (2) 電磁的記録提供命令の執行をするときは、処分を受ける者に対し、この命令は自己の意思に反して供述をすることを命ずるものでないことを教示しなければならないものとする。


6 捜査機関による個人情報の取扱いが適正に行われることを確保するため、個人情報の利用目的、保存期間及び消去等の規定を設けた上で、独立した監督機関を設置する。


(※本文はPDFファイルをご覧ください)