金融経済教育の理念に沿った金融経済教育推進機構の組織及び運営体制の構築を求める意見書


icon_pdf.gif意見書全文 (PDFファイル;603KB)

2023年12月15日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

日弁連は、2023年12月15日付けで金融経済教育の理念に沿った金融経済教育推進機構の組織及び運営体制の構築を求める意見書を取りまとめ、同月18日付けで金融庁長官、消費者庁長官、文部科学大臣、経済産業大臣及び各政党宛てに提出しました。


本意見書の趣旨

1 国は、投資に関連する消費者被害が生じている現状があるにもかかわらず、民間金融関係団体の影響力を強く受けた投資教育が国家戦略として行われようとしているという点への重大な懸念が生じている現状を十分に認識した上で、金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律(以下「本法律」、条文引用の際は「法」という。)により創設される金融経済教育推進機構(以下「機構」という。)については、以下の点を十分踏まえて設立及び運営すべきである。

  (1) 機構の推進する「金融経済教育」(法86条)とは、「国民一人一人が、経済的に自立し、より良い暮らしを送っていくことを可能とするとともに、健全で質の高い金融商品の提供の促進や家計金融資産の有効活用を通じ、公正で持続可能な社会の実現に貢献していくこと」を目的とするものであること。

  (2) 金融経済教育は、金融経済教育推進会議が公表した「金融リテラシー・マップ」で示された「最低限身に付けるべき金融リテラシー」(家計管理、生活設計、金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択、外部の知見の適切な活用)の涵養を中核とするものであり、「金融リテラシー・マップ」の内容を踏まえつつ、広範な観点から金融リテラシーの向上を目指して実施すること。

  (3) 機構は、前記(1)及び(2)のとおり金融経済教育を行い、政府が「資産所得倍増プラン」で示した「貯蓄から投資へのシフト」の方向性を過度に強調したり、国民の金融リテラシーの向上がなされないまま、投資へ誘導したりするような教育を行わないこと。

  (4) 機構は、金融広報中央委員会(以下「金広委」という。)の機能を移管・承継するに当たり、「国民に対し中立公正な立場から金融に関する広報又は消費者教育活動を行い、もって国民経済の健全な発展に資すること」を目的とする金広委の機能や活動を維持及び継続することを確認し、機構への参加又は協力が予定されている民間金融関係団体の活動によって、機構の中立性が害されることのない組織及び運営体制を構築すること。

  (5) 機構の設立及び運営に関し、定款の作成(法94条)、設立の認可(法95条)、運営委員会の組織及び運営(法98条以下)並びに業務方法書の作成及び認可(法121条)が、前記(1)から(4)の点に合致するよう行われること。とりわけ、機構の設立及び業務方法書の認可に当たっては、前記(1)の内容を、定款の「目的」(法94条2項1号)、「業務及びその執行に関する事項」(同条同項7号)及び業務方法書(法121条)に明示的に含めること、理事、監事及び運営委員会の委員には、消費者問題に精通する弁護士及び消費者問題や消費者教育について専門的知見を有する者を選任すること。


2 国は、認定アドバイザー制度を創設するに当たり、認定アドバイザーを顧客の立場に立つ存在として制度上明確に位置付けるほか、以下の点に留意した制度設計を行うべきである。

  (1) 認定アドバイザーが学校や企業等で出前授業やセミナー等を実施する場合、将来の家計不安をいたずらに煽り、国民を無条件に投資へ誘導するような教育が行われることのないよう、金融経済教育の目的にかなう教育の実施が担保される仕組みを構築すること。

  (2) 機構がアドバイザーを認定するに当たり、当該アドバイザーが金融サービスを提供する事業者の従業員、役員及び顧問等を兼ねていないこと、幅広い金融商品を対象としたアドバイスが可能であること、金融商品の組成・販売事業者から報酬等を受領していないこと並びに「金融リテラシー・マップ」の内容を正しく理解していることなど、顧客の立場に立ち、金融サービスを提供する事業者と顧客等との間に利益相反が生じない仕組みを構築すること。


3 国は、金融経済教育を推進するに当たって、消費者教育の推進に関する法律の理念に基づく消費者教育との連関を常に意識するとともに、金融庁、消費者庁、文部科学省及び経済産業省等の関連省庁間の連携を強化すべきである。


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