水俣病認定審査業務に関する環境省の審査基準の改定並びに不知火海沿岸及び阿賀野川流域の住民を対象とした健康調査を求める意見書


icon_pdf.gif意見書全文 (PDFファイル;306KB)


2023年12月14日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

日弁連は、2023年12月14日付けで「水俣病認定審査業務に関する環境省の審査基準の改定並びに不知火海沿岸及び阿賀野川流域の住民を対象とした健康調査を求める意見書」を取りまとめ、同月18日付けで、環境大臣、衆議院議長及び参議院議長宛てに提出しました。


本意見書の趣旨

1 環境省は、2014年(平成26年)3月7日に発出した「公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定における総合的検討について」と題する通知(以下「新通知」という。)を撤回して、2013年(平成25年)4月16日付け水俣病認定義務付け訴訟最高裁判決(以下「平成25年最高裁判決」という。)の趣旨に沿った新たな審査基準を設け、以下のとおり水俣病認定業務が遂行されるようにすべきである。

  (1) 有機水銀に対するばく露についての基準

   ① 新通知が指摘する汚染当時の頭髪、血液、尿、臍帯などの有機水銀値の測定結果や資料を要求すべきではなく、かかる要件を審査の基準に据えることは不適切である。

   ② ばく露歴の有無は、水俣病認定審査会の公的検診による資料のみでなく、本人の陳述や、公的検診以外の長年水俣病患者の診察にあたった主治医の診断などをも基に判定すべきである。

   ③ 「同居していた家族等」の認定状況を勘案する場合には、水俣病認定患者だけでなく、1995年(平成7年)の政治解決(以下「平成7年政治解決」という。)に応じた者や、水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法(以下「特措法」という。)上の救済対象者も含めるべきである。

  (2) 症候の有無についての基準
感覚障害について、新通知のように「表在感覚、深部感覚及び複合感覚」の低下まで要求したり、「手袋靴下型の感覚障害」に限定したりすべきではない。また、平成25年最高裁判決が要求していない基準を新たに設定して、不必要に厳しく審査すべきではない。

  (3) ばく露と症候との間の因果関係についての判断
ばく露と症候との間の因果関係の判断は、医学的診断だけでなく疫学的知見や疫学調査の結果などを十分に考慮して総合的に行われるべきである。また、医学的診断については、水俣病認定審査会の公的検診以外の長年水俣病患者の診察にあたった主治医の診断結果を尊重すべきである。
具体的には

   ① 申請者に他の疾患の既往歴があることを理由に、認定が制限されるべきではない。

   ② ばく露歴の有無は、水俣病認定審査会の公的検診による資料のみでなく、本人の陳述や、公的検診以外の長年水俣病患者の診察にあたった主治医の診断などをも基に判定すべきである。


2 国は、不知火海沿岸及び阿賀野川流域の住民を対象とした健康調査を速やかに実施すべきである。


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