霊感商法等の悪質商法により個人の意思決定の自由が阻害される被害に関する実効的な救済及び予防のための立法措置を求める意見書


icon_pdf.gif意見書全文 (PDFファイル;252KB)


2023年12月14日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

日弁連は、2023年12月14日付けで「霊感商法等の悪質商法により個人の意思決定の自由が阻害される被害に関する実効的な救済及び予防のための立法措置を求める意見書」を取りまとめ、同月18日付けで内閣総理大臣、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、法務大臣、消費者庁長官及び各政党に提出しました。


本意見書の趣旨

霊感商法等の悪質商法においては、個人の価値判断の基準そのものを不当に変容させる勧誘手法が用いられることで、個人の思想良心や信教の自由が侵害され、継続的な寄附等の深刻な経済的被害をもたらすことが多い。しかし、現行の法制度ではこの被害に十分に対応できていない。そこで、当連合会は、国に対し、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(以下「不当寄附勧誘防止法」という。)及び消費者契約法の改正を求める。


具体的には、不当寄附勧誘防止法においては法人又は法人でない社団若しくは財団で代表者若しくは管理人の定めがあるもの、消費者契約法においては法人又は事業者による霊感商法等の勧誘手法に着目し、それぞれの法の性質及び仕組みに応じて、不当寄附勧誘防止法及び消費者契約法に以下の趣旨の規定を設ける立法措置を行うことを提言する(以下、両法の規律の対象となる者を合わせて「法人等又は事業者」という。)。


1 正体や目的を隠した勧誘の禁止

  (1) 法人等又は事業者は、寄附の勧誘に先立って、寄附の勧誘を受ける個人に対し、勧誘者の氏名、法人等又は事業者の名称その他当該寄附の勧誘を行う法人等又は事業者を特定するに足りる事項、宗教団体による勧誘である場合にはその旨を明らかにしなければならない。また、寄附の勧誘に先立って、法人等又は事業者への寄附を勧誘する目的(法人等又は事業者並びに法人等又は事業者の関連団体に加入した後に寄附を勧誘する目的を含む。)を隠蔽するなど、寄附される財産の使途について寄附者に誤認させてはならない。

  (2) 法人等又は事業者が(1)に違反して個人に寄附に係る契約の申込み若しくはその承諾の意思表示又は単独行為をする旨の意思表示をさせたときは、当該個人は、これを取り消すことができる。


2 助言の機会を奪うことの禁止

  (1) 法人等又は事業者は、寄附の勧誘を受ける個人が寄附をするか否かについて相談を行うために当該法人等又は事業者以外の者に連絡することを妨げ又は相談できない心理状態を意図的に作出してはならない。

  (2) 法人等又は事業者が(1)に違反して個人に寄附に係る契約の申込み若しくはその承諾の意思表示又は単独行為をする旨の意思表示をさせたときは、当該個人は、これを取り消すことができる。


3 寄附の勧誘を受ける個人が合理的に判断することができない事情があることを不当に利用した勧誘の禁止(「つけ込み型不当勧誘」の禁止)

  (1) 法人等又は事業者は、寄附の勧誘を受ける個人の困窮、経験の不足、知識の不足、判断力の不足その他の個人が寄附するかどうかを合理的に判断することができない事情があることを利用するなど、不当に勧誘してはならない。

  (2) 法人等又は事業者が(1)に違反して個人に寄附の申込み又は承諾の意思表示をさせたときは、当該個人は、これを取り消すことができる。

  (3) 寄附の内容について、寄附を行った個人の生活状況や資産状況等その実情に照らして、個人又はその配偶者若しくは親族(当該個人が民法877条から880条までの規定により扶養の義務を負う者に限る。)の生活の維持を困難にするなど著しく過大な不利益を与えるものである場合は、当該個人が寄附をするかどうかを合理的に判断することができない事情があることを法人等又は事業者が不当に利用したものと推定する。


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