子どもの権利条約に基づくこども大綱の策定を求める意見書


icon_pdf.gif意見書全文 (PDFファイル;539KB)

2023年7月13日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

日弁連は、2023年7月13日付けで「子どもの権利条約に基づくこども大綱の策定を求める意見書」を取りまとめ、同月19日付けで、こども家庭庁長官、内閣総理大臣、総務大臣、法務大臣、外務大臣、財務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、警察庁長官、衆議院議長及び参議院議長宛てに提出しました。

 

本意見書の趣旨

こども基本法が2023年4月1日に施行され、同法9条の規定により、こども施策を総合的に推進するための「こども大綱」(以下「大綱」という。)の策定作業が進められている。そして、2023年3月28日には、こども政策の推進に係る有識者会議により「こども政策の推進に係る有識者会議第2次報告書~「こども大綱」の策定に向けた論点~」(以下「第2次報告書」という。)が取りまとめられている。

 

当連合会は、第2次報告書の方向性には基本的に賛同するが、子どもの権利保障が確実に実施される大綱とするために、既存の三大綱に記載された事項の他、第2次報告書の内容に追加すべき事項や、第2次報告書の中で特に強調されるべき部分を指摘することが必要であると考え、大綱の策定に関して、以下のとおり意見を述べる。

 

1 日本国憲法、子どもの権利条約及びこども基本法に基づき、子どもの権利主体性が確保され、全ての子どものあらゆる権利が保障される包括的かつ総合的な内容とすること。その際、子どもの権利条約の実施の指針として国連子どもの権利委員会が示す一般的意見及び我が国の定期報告への総括所見を十分に尊重するとともに、速やかに個人通報制度を導入(子どもの権利条約第三選択議定書の批准)する旨を大綱に明記すること。また、一般的意見及び総括所見を尊重する旨を大綱に明記すること。

 

2 子どもの権利条約及びこども基本法の趣旨及び内容が子どもと大人に理解され、子どもが権利を行使し、大人が義務を果たせるよう、子どもの権利に関する教育を実施するための具体的な計画を盛り込むこと。

 

3 子どもの意見表明及びその尊重(子どもの権利条約第12条)が実質的に保障されるために、子どもに寄り添って子どもの意見形成及び表明を支援するための具体的な制度を盛り込むこと。

 

4 国連子どもの権利委員会一般的意見2号を踏まえ、国における独立し専門的な立場で子どもの権利のモニタリングなどをする機関(子どもの権利擁護委員会)の設置及び地方公共団体における子どもの権利に関する相談・救済機関の設置及び充実を盛り込むこと。

 

5 国、地方公共団体、民間団体などが互いに協力して子どもの権利保障がなされるような仕組みが設けられるとともに、国が、地方公共団体の施策や民間団体の活動に様々な支援をするよう努める内容を盛り込むこと。また、環境問題や国際養子の問題など、解決のために他国との協働が必要な問題解決のために、国際協調の理念を盛り込むこと。

 

6 子どもの成長発達を等しく保障するために、様々な環境下で育つ子どもの生活実態を把握しつつ、子育て支援にとどまらない子どもを中心に据えたこども施策を行うこと。特に、虐待を受けた子ども、社会的養護の下で暮らす子ども、宗教等二世の子どもなどにも十分な支援が届くように特段の配慮がなされること。

 

7 学校生活において子どもの権利主体性が保障されるとともに、子どもの個性が尊重されることに特に留意しつつ、学校以外における教育への権利にも配慮して、あらゆる子どもの学びの機会を保障すること。また、貧困によって子どもの学習権が制限されないように、教育の無償化を実現すること。

 

8 子どもの権利条約第40条に定める社会復帰の権利、弁護人の援助を受ける権利を保障するために、社会全体で少年の立ち直りを、少年司法分野にとどめることなく総合的に支援するとともに、国選付添人制度の対象事件を身体拘束を受けた全ての少年の事件に拡大すること。

 

9 全ての子どものあらゆる権利が保障されるように、別紙のとおり既存の三大綱や第2次報告書に盛り込まれていない重要な具体的問題についても、大綱に盛り込むこと。

 


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