令和4年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等に関する意見書


icon_pdf.gif意見書全文 (PDFファイル;173KB)

2023年1月27日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

日弁連は、2023年1月27日付けで「令和4年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等に関する意見書」を取りまとめ、同日付けで金融庁宛てに提出しました。

 

本意見書の趣旨

1 取扱いが認められる電子決済手段について

  (1) 電子決済手段等取引業者に、「利用者の保護又は電子決済手段等取引業の適正かつ確実な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる電子決済手段を取り扱わないために必要な措置」(電子決済手段等取引業者に関する内閣府令(案)(以下「府令案」という。)30条1項5号)を求めることに賛成する。ただし、発行者の裏付資産又は制度的な裏付けにより利用者に確実に償還できることが必要であることを明確化すべきである。また、電子決済手段等取引業者が管理する利用者のアカウントに残高が記録された時点で、利用者は発行者に対する償還請求権を取得することとすべきである。

  (2) 電子決済手段等取引業者が取り扱うことができる外国電子決済手段について定める府令案30条1項5号及び30条1項6号に賛成する。ただし、発行者の償還が困難となった等の場合に電子決済手段等取引業者が利用者から当該外国電子決済手段を買い取るために必要な資金については、管理する利用者残高の総額と同額以上の資金が常に保全されていることを求めるとともに、電子決済手段等取引業者が管理・移転できる金額の上限を端的に100万円と定めるべきである。また、日本国内に発行者の拠点が置かれることを求めるべきである。


2 システムの安全性・セキュリティ対策について
電子決済手段等取引業に係る情報の安全管理措置(府令案22条)について賛成する。ただし、利用者の端末におけるセキュリティの確保、及び、発行者と電子決済手段等取引業者との間のセキュリティの確保が必要であることについても、ガイドライン等において明らかにすべきである。


3 不正利用の補償等について
不正利用の補償に関して、電子決済手段等取引業者に補償方針について利用者への情報提供を義務付けること(府令案29条1項7号)に賛成する。ただし、補償内容として、利用者に過失がある場合には、重過失でない限り、利用者の責任を一定額の範囲に限定することを求めるべきである。また、利用者の故意過失に関する立証責任は、事業者側に存することを明らかにすべきである。


4 顧客情報の安全管理や顧客情報の利用について
電子決済手段等取引業者における利用者の情報の保護に関し、電子決済手段等取引業に係る情報の安全管理措置(府令案22条)、個人利用者情報の安全管理措置等(府令案23条)、個人利用者情報の漏えい等の報告(府令案24条)及び特別の非公開情報の取扱い(府令案25条)の規律を設けることに賛成する。ただし、電子決済手段等取引業者に兼業業務が認められる場合は、兼業業務との間の顧客に関する非公開情報等の相互利用について、利用者の同意を求めるべきである。


5 加盟店管理等について
電子決済手段等取引業者に対し、電子決済手段が悪質な取引に用いられることがないよう、電子決済手段等取引業者に加盟店管理等の体制整備を求めるべきである。


6 電子決済手段の管理について
電子決済手段等取引業者における利用者の電子決済手段の管理について、信託会社等への信託、利用者の電子決済手段とそれ以外の電子決済手段の明確な区分、利用者ごとの数量が直ちに判別できる状態での管理を求めること(府令案38条1項)に賛成する。他方、自己信託による管理(府令案38条3項)を認めることについては反対する。


7 苦情等への対処について
電子決済手段等取引業に関する苦情処理措置及び紛争解決措置(府令案42条)について賛成する。ただし、不正利用や消費者被害事案の場合に、利用者が行為者特定等のために行う弁護士法に基づく照会請求や裁判所の調査嘱託等に対し、電子決済手段等取引業者等からの回答が実効的に行われるべきことをガイドライン等において明らかにすべきである。


8 本人確認されていない利用者への移転の防止等について
発行者及び電子決済手段等取引業者において、本人確認されていない利用者への移転を防止すること、本人確認されていない利用者に移転した残高について凍結処理を行うことを確実に求めるべきである。


9 注意喚起と法執行について
日本国内の電子決済手段等取引業者以外の仲介者における取引や電子決済手段等取扱業者が管理しない口座への電子決済手段の移転において詐欺等のリスクが高い旨の注意喚起を行うとともに、資金決済法等の法令に反する行為について実効的な法執行を行うべきである。



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