不当景品類及び不当表示防止法の更なる改正等を求める意見書

2022年12月15日
日本弁護士連合会

本意見書について

日弁連は、2022年12月15日付けで「不当景品類及び不当表示防止法の更なる改正等を求める意見書」をとりまとめ、同月16日付けで内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)及び消費者庁長官宛てに提出しました。


本意見書の趣旨

1 景表法の自主報告制度の拡張又は確約手続類似の制度導入の可否

  (1) 景表法上の不当表示(同法5条)による消費者被害の発生・拡大を迅速に事前抑止するとともに、自主返金制度(同法10条)による被害回復を有効に機能させるためには、当連合会が前回意見書において提案したとおり、現行の自主報告制度(同法9条)に加え、「消費者庁の調査開始前に、課徴金対象行為を行った事業者が自主的に一定の対応(例えば早期の違反行為の中止、違反事実の公表、返金措置、将来に向けた違反の疑いのある行為の取りやめ、再発防止策の策定等)をとった場合には、措置命令及び課徴金納付命令を行わないこととする制度」の導入が検討されるべきである。

  (2) 一方、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)上の確約手続(同法48条の2~48条の9)に類似する制度(以下「確約類似制度」という。)の導入も一定のメリットがあり、否定するものではない。

  (3) 確約類似制度を導入するとすれば、確約措置を明らかにするなど確約手続の透明性の確保を図ること、確約計画を遵守しなかった事業者に対して場合によっては制裁を課することが可能な制度を設けるべきこと、効果的な確約計画を策定するために必要な事項を公表して広く第三者からの意見募集を行うことなどが必要である。

  (4) 確約類似制度の導入に当たっては、以下の条件を制度設計に組み込むべきである。

   ① 確約類似制度を導入するのと同時に、現行の課徴金率(対象商品・役務等の総売上高の3%)の引上げを伴うこと。

   ② 同制度を適用する対象は、不当表示の内容・態様において悪質性の顕著な不当表示事案が除外されること、更に措置命令と課徴金納付命令では対応困難な事例(法執行に長期間を要する場合を含む。)において適切かつ効果的な解決を導くことができる場合や、措置命令等によっては実現不可能な柔軟な解決策をとることによって不当表示の排除及び抑止が効果的に行われる場合であること。

   ③ 確約計画においては、被害回復が中核に据えられること。


2 不当表示規制(景表法5条)の対象範囲の拡張について

  (1) 現行法上、優良誤認表示(同法5条1号)・有利誤認表示(同法5条2号)の文言の中に読み込んで適用されているいわゆる「打消し表示」の懈怠又は不足という形態の不当表示については、上記2種の不当表示類型から切り離し(現行1号・2号は専ら積極的な虚偽情報提供類型に純化する。)、新たな5条3号として打消し表示の懈怠・不足類型としての明文規定を設けるべきである(現行5条3号指定告示事項は、4号指定告示事項として繰り下げる。)。

  (2) 現在、経済協力開発機構消費者政策委員会(OECD CCP)等を通じて国際共同研究が進められているいわゆる「ダークパターン」(消費者がインターネットサイトを通じて取引を行うに際し、気付かない間に誤解や錯覚に陥らされ、不利・不合理な判断・意思決定に誘導されてしまうような事業者サイトの悪質なWebデザイン)について、新たな類型の指定告示事項として取り込むことが可能かどうか検討を進めるべきである。

  (3) SDGsや消費者市民社会等の公益的観点からの消費者の選択行動の基礎となる商品情報(例えば、人や社会、地球環境、地域に配慮したエシカル消費の推進に資する情報)の不当表示に関し、新たな類型の指定告示事項として取り込むことが可能かどうか検討を進めるべきである。


3 不当表示抑止の観点から、適格消費者団体・特定適格消費者団体がその権限を適切に行使するために必要な制度について

   (1) 景表法に違反する事案に関して行政庁が有する情報について、その性質等に応じて、適格消費者団体や特定適格消費者団体に提供する制度を創設するべきである。

   (2) 行政庁が、事業者に対して景表法上の措置命令、課徴金納付命令(いずれも同命令の取消しを含む。)及び対象消費者への返金措置等命令を発した事案に関して行政庁が保有する情報について、特定適格消費者団体への提供を法制度上可能とするべきである。具体的には、消費者裁判手続特例法91条1項を改正し、景表法に基づく処分に関して作成した書類を、特定適格消費者団体に提供できるものとすべきである。

   (3) 適格消費者団体の差止訴訟につき、優良誤認表示に関する立証手段の拡充の観点から、

   ① 適格消費者団体が求めた場合に、事業者が合理的な根拠を示す資料を提出する義務を定めるべきである(ただし、適格消費者団体が差止請求権を行使できない場合(消費者契約法12条の2第1項)には、資料の提供を求めることができない。)。

   ② 適格消費者団体が表示の根拠となる客観的資料の提出を求め、事業者から合理的な資料の提出がなければ、不当表示とみなす制度を新設すべきである。

   ③ 景表法等の制度として、事業者が適格消費者団体に提出した合理的な根拠を示す資料につき、国民生活センター、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)などが、適格消費者団体の要請に基づき必要な分析等を行う制度を設けるべきである。

  (4) 景表法31条の「協定又は規約」の新設、変更、取消しについて、これらを要請し、あるいは意見を述べる権限と機会を、消費者や適格消費者団体等に付与すべきである(少なくとも適格消費者団体がかかる権限を有することを法文上明記すべきである。)。

  (5) 適格消費者団体の差止請求は、事業者が不当な表示を止めた場合であっても可能であることを明示すべきである。

  (6) 適格消費者団体及び特定適格消費者団体の機能強化のために、同団体の公益性及び役割に見合う、経済的支援を行うべきである。


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