メガソーラー及び大規模風力発電所の建設に伴う、災害の発生、自然環境と景観破壊及び生活環境への被害を防止するために、法改正等と条例による対応を求める意見書

2022年11月16日
日本弁護士連合会

本意見書について

日弁連は、2022年11月16日付けで「メガソーラー及び大規模風力発電所の建設に伴う、災害の発生、自然環境と景観破壊及び生活環境への被害を防止するために、法改正等と条例による対応を求める意見書」を取りまとめ、同月28日付けで農林水産大臣、環境大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、総務大臣、林野庁長官及び資源エネルギー庁長官宛てに提出しました。


本意見書の趣旨

1 国は、再生可能エネルギーの一層の推進を図るためにも、メガソーラー及び大規模風力発電所の建設に伴う被害を防止するために、以下の法改正等を行うべきである。


  (1) 森林法の改正による対応について

   ① 森林法第1条の目的規定を改正し、森林の有する公益的機能(水源涵養機能、水害防止機能、土砂災害防止機能、気候変動緩和機能、大気浄化機能、生物多様性保全機能、景観形成・保健・保養・文化機能)の確保等を目的に加えるべきである。

   ② 森林法第10条の2の林地開発許可規定に、公益的機能の保全のための要件を追加し、都道府県知事に森林の公益的機能保全の観点からの要件裁量・効果裁量を与える規定に改正すべきである。

   ③ 森林法第10条の2第2項の許可要件についての技術的基準を法令で定め、また、地方自治体が基準を強化することができることを明示的に規定し、さらに、技術的基準の適否については、災害防止の見地から十分であるかを国が検討委員会等により定期的に点検することを義務付けるべきである。

   ④ 林地開発許可に当たっては、災害の防止、水源保全、生物多様性保全、景観保全も内容に含む林地開発計画の提出を義務付け、許可された場合には、その遵守を法律上義務付けるとともに、林地開発計画が遵守されていない場合には、許可処分を撤回できる旨の規定を明文で設けるべきである。

   ⑤ 住民参加及び森林の公益的機能の実効的保全の観点から、林地開発許可において地域住民との事前協議を行うことを義務付けること、また、その前提として、関連情報を地域住民に提供することについての規定を設けるべきである。

   ⑥  保安林の指定解除に当たっては、専門家も入った第三者機関である林政審議会ないし都道府県森林審議会への諮問を必須とすべきである。

   (2) 環境影響評価法の改正等による対応について

   ① 再生可能エネルギー発電施設に関する環境影響評価(環境アセスメント)の実施において、計画段階環境配慮制度に基づく配慮書の作成のほか、ゼロ・オプション(事業目的が達成可能で環境影響評価法の対象事業種の事業を実施しない案)を含む代替案の検討を十分に行うことを義務付けるべきである。

   ② 国は、風力発電に関し、環境影響評価の対象となる規模要件を、環境影響評価法施行令改正による緩和前の7500キロワット以上とすべきである。
また、地球温暖化対策の推進に関する法律の改正による促進区域の設定の際に、住民との情報共有を十分に行った上で住民参加の機会を設けること及び適正な環境影響評価を義務付けるべきである。

   ③ 実質的には一体の再生可能エネルギー事業を複数の小規模の事業に分けて計画することで環境影響評価法の対象外の事業としようとする、いわゆる「環境アセスメント逃れ」(アセス逃れ)が生じないようにするために、環境影響評価対象事業基準を見直し、より明確にすることを検討すべきである。

   ④ 環境影響評価図書の公表・縦覧について、市民が詳細に分析できるよう直ちに是正されるべきである。

  (3) 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(以下「再エネ特措法」という。)の改正等による対応について

   ① 再生可能エネルギー開発と自然環境保全や地域住民の生活保全との両立の趣旨を再エネ特措法に明記すべきである。

   ② 自然環境や地域住民の生活環境への著しい影響が予測される一定の規模の再生可能エネルギー発電施設については、FIT認定ID(固定価格買取制度の事業計画認定を受けたID)や発電設備の転売に要件を設ける等の規制を行うべきである。

   ③ 全ての再生可能エネルギー発電施設の申請については、地域住民に対して、FIT認定の申請段階から情報開示がなされるようにすべきである。

   ④ 再エネ特措法が、条例を含む関係法令遵守を認定計画の要件にしている以上、違法・脱法行為に対しては、早期の適切な指導のほか、是正命令の発令や、認定取消しも含めた厳しい対応を行うべきである。

  (4) 公害紛争処理法の改正等による紛争予防・解決制度の導入 地域における再生可能エネルギー事業による紛争を公害紛争処理法の対象とするなど、中立的な専門家が関与して、紛争を予防・解決する制度を導入すべきである。

  (5) 地域に資する再生可能エネルギー事業を実現するための制度の導入再生可能エネルギー事業の経済的利益を地域に還元することを必須とする制度を導入すべきである。

2 地方自治体は、森林や原野等における大規模開発等を規制するため、以下のような条例を制定し、地域の実情に応じて対応策をとるべきである。

  (1)  地方自治体は、森林等の著しい開発行為を規制するために、条例制定等による対応を積極的に検討すべきである。

  (2) 地方自治体は、ゾーニングを通じて、再生可能エネルギー発電施設の建設による問題に対応しつつ、再生可能エネルギー事業の持続的な発展を実現するために、条例の制定等による対応を積極的に検討すべきである。



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