高齢者及び障害者虐待に係る通報をした者の保護の徹底を求める意見書

 2022年11月16日
 日本弁護士連合会


本意見書について

日弁連は、2022年11月16日付けで「高齢者及び障害者虐待に係る通報をした者の保護の徹底を求める意見書」を取りまとめ、同月22日付けで法務大臣及び厚生労働大臣宛てに提出しました。


本意見書の趣旨

1 通報者等を萎縮させる行為の禁止について

  (1) 「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者の支援等に関する法律」(以下「高齢者虐待防止法」という。)について、第1章の中に、「何人も、高齢者虐待に係る通報及び届出を妨げ又は通報及び届出を萎縮させる行為をしてはならない。」旨の定めを置くべきである。

  (2) 「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(以下「障害者虐待防止法」という。)について、第1章の中に、「何人も、障害者虐待に係る通報及び届出を妨げ又は通報及び届出を萎縮させる行為をしてはならない。」旨の定めを置くべきである。


2 通報者に対する損害賠償請求の禁止について

  (1) 養介護施設従事者等による高齢者虐待について、高齢者虐待防止法第21条第7項を、「養介護施設の設置者又は養介護事業を行う者は、第1項の規定による通報をした者に対して、同項の規定による通報をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを行うこと及び損害賠償請求をしてはならない。」と改正すべきである。

  (2) 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待について、障害者虐待防止法第16条第4項を、「障害者福祉施設の設置者又は障害福祉サービス事業等を行う者は、第1項の規定による通報をした者に対して、同項の規定による通報をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを行うこと及び損害賠償請求をしてはならない。」と改正すべきである。

  (3) 使用者による障害者虐待について、障害者虐待防止法第22条第4項を、「障害者を雇用する事業主は、第1項の規定による通報又は第2項の規定による届出(虚偽であるものを除く。)をした者に対して、第1項の規定による通報又は第2項の規定による届出(虚偽であるものを除く。)をしたことを理由として解雇その他不利益な取扱いを行うこと及び損害賠償請求をしてはならない。」と改正すべきである。


3 通報に当たっての守秘義務等が免じられない場合等の要件を虚偽の通報をした場合に限定すべきことについて

  (1) 高齢者虐待防止法については、第21条第6項に定める養介護施設従事者等による高齢者虐待に係る通報について、守秘義務に関する法律の規定が適用されるための通報者の主観的要件並びに不利益な取扱い及び損害賠償請求を禁止しないための通報者の主観的要件を、いずれも、虚偽であるものに限定するように改正すべきである。
また、養介護施設従事者等が通報するときは、当該養介護施設の設置者又は養介護事業を行う者との契約に基づいて守秘義務を負う場合においても、免責されることを明確にするべきである。

  (2) 障害者虐待防止法については、第16条第3項に定める障害者福祉施設従事者等による障害者虐待に係る通報について、守秘義務に関する法律の規定が適用されるための通報者の主観的要件並びに不利益な取扱い及び損害賠償請求を禁止しないための通報者の主観的要件を、いずれも、虚偽であるものに限定するように改正すべきである。
また、障害者福祉施設従事者等が通報するときは、当該障害者福祉施設の設置者又は障害福祉サービス事業等を行う者との契約に基づいて守秘義務を負う場合においても、免責されることを明確にするべきである。

  (3) 使用者による障害者虐待に係る通報について、障害者虐待防止法第22条第3項に定める守秘義務に関する法律の規定が適用されるための通報者の主観的要件並びに同条第4項に定める(本意見書の前号による改正後の)不利益な取扱い及び損害賠償請求を禁止しないための通報者の主観的要件を、いずれも、虚偽であるものに限定するように改正すべきである。
また、労働者が通報又は届出をするときは、使用者との契約に基づいて守秘義務を負う場合においても、免責されることを明確にするべきである。


4 通報保護担当官の創設について

  (1) 養介護施設従事者等による高齢者虐待に係る通報について、高齢者虐待防止法第3章の中に、「都道府県及び市町村は、都道府県及び市町村の高齢者虐待担当部署に、独立した第三者である「通報保護担当官」を置かなければならない。」との規定を新設するべきである。

  (2) 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待及び使用者による障害者虐待に係る通報について、障害者虐待防止法第6章の中に、「都道府県及び市町村は、都道府県障害者権利擁護センター及び市町村障害者虐待防止センターに、独立した第三者である「通報保護担当官」を置かなければならない。」との規定を新設するべきである。

  (3) 上記(1)(2)で提案する通報保護担当官の職責や権限について、新設された通報保護担当官に関する規定に、次の趣旨を含めることを提案する。

   ① 通報保護担当官が相談をした通報者に寄り添い、その保護と必要な助言指導を継続的に行う職責を全うするために、都道府県及び市町村の高齢者虐待防止担当部署並びに都道府県障害者権利擁護センター及び市町村障害者虐待防止センターにおいて、いつでも相談を受けられるような体制を整備するようにする。

   ② 通報者に対する不利益な取扱いが疑われる場合には、通報保護担当官が、通報者が働く事業者の施設その他の附属建設物に立入調査し、書類その他の物件の提出を求めたり、関係者に質問したりする介入権限を行使できるようにする。

   ③ 高齢者虐待防止法第5章及び障害者虐待防止法第8章の中に、これら通報保護担当官による調査の結果、通報者に対する不利益な取扱いが認められた場合や通報保護担当官の権限行使を妨げた場合等には、通報保護担当官において、都道府県及び市町村と十分に連携し、当該事実を公表するよう都道府県及び市町村に対し進言できるようにするとともに、通報者の解雇、降格及び減給等の重大な不利益取扱いがある場合には、通報保護担当官において、都道府県及び市町村に対し当該事業者の指定取消しを進言できるようにする。



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