デジタル改革関連6法についてプライバシー・個人情報保護の観点から、必要な法改正と法の適正な運用を求める意見書

2021年12月17日
日本弁護士連合会


本意見書について

日弁連は、2021年12月17日付けで「デジタル改革関連6法についてプライバシー・個人情報保護の観点から、必要な法改正と法の適正な運用を求める意見書」を取りまとめ、同月20日付けで内閣総理大臣、デジタル大臣及び個人情報保護委員会委員長に提出しました。


本意見書の趣旨

デジタル改革関連6法は、プライバシー・個人情報保護には十分ではなく、憲法の保障するプライバシー権(憲法第13条)を侵害し、個人情報が内閣総理大臣の下に集中しかねない。


よって、デジタル庁設置法及び個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)等、次の(1)~(6)の諸点について、必要な法改正を行うとともに、デジタル庁及び個人情報保護委員会を中心とする適正な運用並びに国会における十分な監視を求める。


(1) デジタル社会形成基本法及び個人情報保護法にプライバシー権の一内容である自己情報コントロール権の保障を明記するよう法改正すべきである。


(2) デジタル庁設置法はデジタル庁と内閣総理大臣に、他の中央官庁のいずれにも例がない強大な権限を与えているが、デジタル庁を内閣(第2条)ではなく内閣府(の外局)に置き、デジタル庁の長は内閣総理大臣(第6条第1項)ではなく特命担当大臣であるデジタル大臣(第8条)とするとともに、デジタル大臣の勧告についての尊重義務の規定(同条第5項)を削除し、かつ、勧告に当たっては、国民の個人情報やプライバシーを不当に侵害するものにならないよう配慮しなければならない旨の法改正を行うべきである。


(3) 改正後の個人情報保護法第69条第2項第2号及び第3号で、行政機関等による保有個人情報の目的外利用や他の行政機関等への提供が可能となる「相当の理由」を「特別の理由」にするなど、そうした目的外利用や提供が許される場合を限定するよう法改正すべきである。


(4) 個人情報保護法については、個人情報保護委員会の組織を、少なくとも公正取引委員会並みに、常時800名程度の職員と各地方事務所を有する組織に拡大することを始めとして、その権限が抜本的に強化されなければならない。まずは犯罪捜査と外交防衛分野に係る個人情報ファイルについて、個人情報ファイル簿の作成・公表及び個人情報保護委員会への事前通知を義務付けるよう法改正すべきである。

また、個人情報保護委員会に、行政機関に対する立入調査と命令の権限を付与する法改正をすべきである。

さらに、個人情報保護委員会の国会に対する年次報告について、従来の報告は全く不十分であるため、少なくとも行政機関については厳格な調査を行い、その報告がなされるよう運用されるべきである。同時に、個人情報保護委員会自体も、ウェブサイト等を活用して、より積極的に活動状況の情報公開を促進すべきである。


(5) 預貯金口座と個人番号(マイナンバー)との紐付けについては、事実上の強制とならないように配慮した運用を求める。


(6) デジタル改革関連6法自体の問題ではないが、内閣情報調査室、公安調査庁や自衛隊情報保全隊等の活動についての監視システムは存在しない。デジタル庁の発足に当たり、これらの情報機関の活動については、個人情報保護委員会又はこれとは別個に独立した専門の第三者機関が、職権で、特定秘密や情報機関が集めた情報、デジタル庁が共通仕様化した情報等の中身までもチェックし、これに対して是正の勧告・命令ができる制度が必要である。



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