地方公共団体における情報システムの標準化・共同化に関する意見書

2021年11月16日
日本弁護士連合会


本意見書について

日弁連は、2021年11月16日付けで「地方公共団体における情報システムの標準化・共同化に関する意見書」を取りまとめ、同月19日付けで総務大臣、デジタル大臣、全国知事会会長、全国市長会会長、全国町村会会長、全国都道府県議会議長会会長、全国市議会議長会会長及び全国町村議会議長会会長宛てに提出しました。


本意見書の趣旨

1 国は、地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(以下「標準化法」という。)に基づく地方公共団体が利用する情報システムの標準化並びにデジタル社会形成基本法に基づく国及び地方公共団体の情報システムの共同化又は集約(以下、これらを合わせて「システム標準化等」という。)を進めるに当たっては、それが住民の利便性の向上及び地方公共団体の行政運営の効率化のためのものである趣旨に照らし、次の措置をとることにより、地方公共団体の事務の執行における自由度を十分に確保し、地方自治の本旨、特に団体自治を侵害することとならない仕組みとすべきである。

  (1) 標準化法第6条第1項及び第7条第1項に基づく地方公共団体情報システムの標準化基準の策定に当たっては、地方公共団体の業務実態を十分に踏まえたものとするとともに、独自施策が容易に実施できるような基準とすること。

  (2) 地方公共団体情報システムは、地方公共団体が地域の実情に応じた施策を実施できるよう、カスタマイズを可能とする仕組みとすること。

  (3) 地方公共団体のシステム標準化等に要する経費(移行に要する経費及びカスタマイズに要する経費を含む。)については、全ての地方公共団体に対して等しく、これらの財政需要を合理的に算定した財政措置を講ずるものとし、地方公共団体の独自施策を事実上抑制したり特定の事業を優遇したりするような財政誘導を行わないこと。

  (4) 情報システムの共同化については、ガバメントクラウドの利用が地方公共団体の努力義務とされている(標準化法第10条)ところ、地方公共団体の自主的な判断を尊重し、その利用を地方公共団体に対して義務付けることや財政誘導を行わないこと。また、複数の地方公共団体の連携による情報システムの共同化についても、地方公共団体に対して義務付けることや財政誘導を行わないこと。

  (5) 地方公共団体の情報システムが円滑に運営されるためには、地域の情報産業の支えが不可欠であるので、国は、地域の情報産業が地方公共団体の業務を適切に処理することができる環境を整えること。


2 国は、システム標準化等の実施に当たっては、個人情報の管理について、その安全性を確保し、情報セキュリティ対策に万全を期するため、次の措置をとるべきである。

  (1) 国及び地方公共団体等の各行政機関等が保有する個人情報を特定の機関に集約する「一元管理」の方法をとるものとはせず、各行政機関等が個人情報を管理する「分散管理」の方法を採用すること。

  (2) 不正アクセスに対する十分な技術的担保(情報セキュリティ対策)を講じるとともに、地方公共団体が保有する個人情報について地方公共団体がアクセス履歴をチェックできる仕組みを構築すること。また、外部からの不正アクセスのみならず、各行政機関等のアクセス権限のある者による不正アクセスを防止するため、専門家によって組織された第三者機関を設置し、情報セキュリティ体制を監視する制度を構築すること。


3 国は、システム標準化等の業務を所管することが予定されている地方公共団体情報システム機構について、代表者会議の構成を改めて見直すこと、個別の地方公共団体がガバナンスに参画する権利を法律上明記することなどにより、地方公共団体によるガバナンスを強化するとともに、同機構を情報公開法制の対象とするなど業務の透明性を確保するための措置を講じるべきである。


4 国は、システム標準化等の検討・実施については、地方公共団体の意見や要望を十分に反映し、業務の実態を踏まえたものとするとともに、国民の的確な理解と批判の下で公正かつ民主的に行われることを確保するため、次の措置を講じるべきである。

  (1) システム標準化等に関する国と地方公共団体との公式の協議検討組織を設置すること。

  (2) システム標準化等を検討するワーキンググループ等の運営については、資料等の公表、会議の公開等を含め、国民に対して透明性が確保された手続とすること。


5 地方公共団体は、システム標準化等を含む行政のデジタル化を進めるに当たって、特定の民間企業の利益を図ることとならないよう、地方行政の中立・公平性を確保するための体制を強化・拡充すべきである。また、そのために国においても、地方公共団体における職員への技術指導、専門性を有する職員の育成等を支援する制度を設けるべきである。




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