新型コロナウイルスワクチン接種に関する提言書

2021年2月19日
日本弁護士連合会


本提言書について

日弁連は、2021年2月19日付けで「新型コロナウイルスワクチン接種に関する提言書」を取りまとめ、2月22日付けで国務大臣(新型コロナウイルスワクチン接種推進担当)、厚生労働大臣、各政党代表者、全国知事会会長、全国市長会会長、全国町村会会長宛てに提出しました。


本提言書の趣旨

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、我が国では深刻な人権問題、社会問題、経済問題等が複合的に生じており、この克服に向けた社会的要請は大きい。かかる状況の下、国は、新型コロナウイルスのワクチン接種(以下「本件ワクチン接種」という。)を開始し、全国的に展開することを企図している。本件ワクチン接種に寄せられる期待は、たしかに大きいと言える。


しかし、新型コロナウイルスのワクチン開発は極めて短期間のうちに行われ、しかも、従来にない新しいタイプのワクチン(mRNAワクチン、DNAワクチン等)も多く、不測の副反応の懸念も否定できない。


さらに、かくも大規模なワクチン接種を行うことは、我が国にとって前例のない取組であり、新たな人権問題、社会問題等が生じる懸念も強い。また、現在の知見が及ばない有害事象の発生も否定できない。


ワクチンが人々の命と健康を守り、感染症の予防に果たしてきた役割が大きいことは、言うまでもない。その一方で、ワクチンが深刻な副反応を引き起こした例があることもまた事実である。当連合会も、これまで、過去の医薬品被害の教訓や、有効で安全な医薬品を求める人々の願いを踏まえ、医薬品の安全性確保と被害救済、自己決定権の保障を含む患者の権利などについて意見書等を公表してきたところである。本件ワクチン接種が深刻な新型コロナウイルス感染症の感染拡大の中での強い社会的要請であるとしても、そのようなときにこそ冷静に有効性を見極め、安全性を重視した対応が求められよう。国は、感染症対策の視点が「患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保」することにあること(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律前文)を今一度確認し、本件ワクチン接種の全過程で、その責任において問題を適切に予測して可及的に防止する措置を講じるとともに、問題が発生したときには適切・迅速に対応することが必要不可欠である。


かかる観点から、以下の提言を行うものである。


1 本件ワクチン接種が、極めて短期間のうちに開発されたワクチンを、全国的に多数人に使用するものであること等に鑑み、その承認審査、とりわけ特例承認については、国は、社会的要請や迅速性のみに傾倒することなく、医学的見地から国内外の有害事象にも十分配慮して有効性及び安全性の検証を慎重に行うこと。


2 国は、副反応情報や、審議会の議事録等の速やかな公表など、有効性及び安全性その他の接種の判断に必要な情報を徹底して適時かつ的確に公表するとともに、接種現場でのインフォームドコンセントの徹底を主導する等により、接種対象者の自己決定権が尊重された接種が行われる体制を構築すること。


3 国は、ワクチン接種はあくまで個人の選択により行われるべきものであることの理解を広げるとともに、本件ワクチン接種に関する偏見差別防止やプライバシー保護を行うための、有効な施策を講じること。


4 本件ワクチン接種が我が国の経験したことのない大きな規模になることを踏まえ、国は、その責任の下で、実務を担う各地方公共団体の意向を尊重しつつ的確に連携を保ち、医師不足等への補助体制を整備すること。


5 国は、本件ワクチン接種の有効性及び安全性について責任を持ち、本件ワクチン接種の不測の副反応等に対処するため万全の措置を講じること。万一副反応等の有害事象が生じた場合には、国の責任において適切かつ十分な対応を行うこと。



(※本文はPDFファイルをご覧ください)