産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会報告書「ウィズコロナ/ポストコロナ時代における特許制度の在り方(案)」に対する意見書

2021年1月21日
日本弁護士連合会


本意見書について

日弁連は、2021年1月21日付けで「産産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会報告書『ウィズコロナ/ポストコロナ時代における特許制度の在り方(案)』に対する意見書」を取りまとめ、特許庁に提出しました。


本意見書の趣旨

1 報告書案に挙げられた各検討事項について基本的に賛成する。詳細は以下のとおりである。


2 第三者意見募集制度の導入は、具体的な法制化に一歩踏み込む提案を行っている点は評価できる。ただし、第三者意見募集制度と弁論主義との関係について、更なる議論が必要である。また、当事者による書証提出作業の負担を軽減する等、裁判所と当事者や弁護士間の協議によって、制度の適切な運用が図られることが必要である。


3 特許権者の金銭的救済の充実に関する報告書案の見解には賛成できるものであるが、損害賠償制度の根幹が民法に基づくものである以上、その制度設計については、民法及びその他の関連法の改正に関する議論等を注視しつつ整合性を確保することに留意するべきである。


4 訂正審判等における通常実施権者の承諾の要件の見直し及び特許権の放棄における通常実施権者等の承諾について


 (1) 訂正審判の請求及び訂正の請求における通常実施権者等の承諾を不要とする改正に賛成する。


 (2) 特許権の放棄における通常実施権者等の承諾については、特許権の放棄における通常実施権者の承諾を不要とする改正に賛成する。ただし、独占的通常実施権者は、対象特許を独占的に実施する地位を有する等の固有の利益を有し、特許権放棄によって独占的な地位を失うこととなるため、改正に当たっては、独占的通常実施権者に不測の損害を与えることがないよう留意する必要性がある。専用実施権の放棄、仮専用実施権の放棄及び実用新案登録に基づく特許出願における通常実施権者の承諾に関し、改正の必要性を検討するという報告書案の結論に賛成する。


5 口頭審理期日における当事者等の出頭のオンライン化に関し、ウェブ会議システム等を用いて、当事者、参加人及び代理人が物理的に審判廷に出頭することなく口頭審理における手続に関与することを可能にすることについて賛成する。


6 権利回復制度について、同制度を国際水準に沿ったものにするためには、法改正により、「正当な理由」という要件に替えて、「故意でないこと」という要件を採用し、人為的なミスでも意図的でなければ救済の可能性を認めるべきである。


7 模倣品の越境取引に関して、商標法及び意匠法とは異なり、特許法及び実用新案法についてなお検討を継続することにも理由があると考える。




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