インターネット通信販売における定期購入契約等の被害に対する規制強化を求める意見書
本意見書について
日本弁護士連合会は、2020年7月16日付けで「インターネット通信販売における定期購入契約等の被害に対する規制強化を求める意見書」を取りまとめ、7月17日付けで内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会委員長宛てに提出しました。
本意見書の趣旨
インターネットを利用した通信販売において、健康食品等の「定期購入契約」を巡る消費者トラブルが急増するとともに、その他の通信販売においても従来の規制では対応できないトラブルが発生してきていることに鑑み、国は、特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)について、以下の改正を行うべきである。
1 インターネットの広告画面及び申込画面に関する規制の強化
(1) インターネットの広告画面及び申込画面において、以下のような表示方法をとることを特商法14条1項2号の指示対象行為として具体的に禁止する とともに、これらにより禁止される表示例をガイドライン等により明確化すること。
① 契約内容の有利条件や商品等の品質・効能の優良性を殊更に強調する一方、有利性や優良性が限定される旨の打消し表示が容易に認識できないもの。
② 初回分と2回目以降の契約条件を分離して表示するなど、2回目以降の定期購入契約が付帯しているものであることが容易に認識できないもの。
③ 定期購入契約と矛盾しかねない「初回無料」、「お試し」等の文言を用いるもの。
(2) 通信販売業者がインターネットの広告をいわゆるアフィリエイト広 告として広告代理店又はアフィリエイターに委託した場合であっても、広告主である通信販売業者が誇大広告等の禁止(特商法12条)の責任を負う旨を明示すること。
(3) 広告代理店又はアフィリエイターが通信販売業者における広告表示内容の決定に関与している場合には、当該広告代理店又はアフィリエイターを、誇大広告等の禁止(特商法12条)及び顧客の意に反して通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みをさせようとする行為の禁止(特商法14条1項2号、同法施行規則(以下「省令」という。)16条1項)の適用対象とすること。
(4) 通信販売業者が誇大広告等の不当なインターネット広告の表示を中止した場合であっても、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)と同様に、同種の不当な広告の再開のおそれ及び既存の契約者の誤認継続のおそれを防止するため、特商法14条及び15条による行政処分(指示処分及び業務停止命令)が可能であることを明示すること。
2 民事規定の整備
(1) 通信販売業者がアクティブ広告(ターゲティング広告及びSNS等のインターネットを通じた積極的働き掛けを伴う広告)により消費者を誘引し、消費者が申込みを行い又は契約した場合、契約内容についての重要事項を記載した契約内容確認通知の送信を通信販売業者に義務付けるとともに、消費者によるクーリング・オフを認めること。
(2) インターネットを通じた広告(アフィリエイト広告等、当該通信販売業者が委託した者による広告を含む。)において、通信販売業者が契約内容や条件に関する重要事項について不実表示等を行い、消費者が誤認して申込みを行い又は契約した場合、消費者に取消権を認めること。
(3) インターネットを通じた通信販売による、健康・美容増進の目的で身体に用いられるがその効果が不確実な性質を有する健康食品・化粧品等の商品に関する定期購入契約について、消費者の中途解約権を認めるとともに、中途解約の際に通信販売業者が消費者に対して請求し得る損害賠償等の額の上限を定めること。
(4) 通信販売業者がインターネット上で契約の申込みを受けた場合、当該契約者が契約の申込みに至る過程で閲覧した広告(アフィリエイト広告等、当該通信販売業者が委託した者による広告を含む。)画面及び当該契約者が申込みを行った際の申込画面を一定期間保存する義務を負うものとすること、並びに当該契約者からの求めに応じて開示する義務を負うものとすること。
(5) 通信販売業者がインターネットを通じた定期購入に関する通信販売契約について解約返品特約を定めるときは、契約申込みの方法と同様のウェブサイト上の手続による解約申出の方法を認めることを義務付けるとともに、解約申出に対して迅速かつ適切に対応する体制の整備を義務付けること。さらに、解約申出方法の不備又は体制整備の不備により解約申出が到達できない場合であっても、解約申出行為から相当な時期に到達したものとみなす旨の規定を設けること。
3 適格消費者団体の差止請求権の拡充
適格消費者団体の差止請求権の対象として、インターネットを通じた通信販売業者による以下の行為を追加すること。また、違反行為を中止した場合であっても、同種行為の再開のおそれがあるときは差止請求が可能であることを明示すること。
(1) 誇大広告等の禁止(特商法12条)のうち、販売価格、支払時期等、省令11条4号が規定する特商法11条1号から3号までに掲げる事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものより著しく優良であり、若しくは有利であると消費者を誤認させるような表示をする行為。
(2) 顧客の意に反して申込みをさせようとする行為(特商法14条1項2号、省令16条1項1号及び2号)。
(3) 意見の趣旨2(2)において提案する取消権の対象となる行為、並びに同2(1)及び(3)において提案するクーリング・オフや中途解約権を制限する特約を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示に結びつき得る行為。
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