消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の見直しに関する意見書

2020年7月16日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

当連合会は、2020年7月16日付けで「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の見直しに関する意見書」を取りまとめ、同年7月16日付けで内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)及び消費者庁長官に提出しました。


本意見書の趣旨

国は、消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律(以下「特例法」という。)の施行3年後見直しに当たり、下記の事項について検討を加え、必要な立法措置等を講ずるべきである。


1 特例法の改正等について


(1) 対象となる事案の範囲の拡大


① 共通義務確認訴訟の対象となる損害の限定を撤廃し、不法行為に基づく損害賠償請求について、特別法によるものを対象外としている部分を削除すべきである。


② 被告の範囲について、被告となる事業者の限定を撤廃し、当該事案において民法上の不法行為又は共同不法行為が成立する事業者の役員(実質的支配者を含む。)を被告とすることができるようにすべきである。


(2) 和解の規律の柔軟化


① 共通義務の存否を明らかにせず、手続に参加した対象消費者に一定の金額を支払う和解を可能にすべきである。


② 消費者庁長官が指定する公益的団体に寄付する内容の和解をすることができるよう、特例法第83条第3項を改正すべきである。


③ 事業者が自主返金を行った場合の特定適格消費者団体に対する報告徴収制度を特例法に設けるべきである。


(3) 簡易確定手続の通知の改善


① 簡易確定手続の通知費用は、相手方が負担するものとすべきである。


② 相手方が、被害回復を進めるに足りる財産を保有している見込みがない場合や対象消費者への自主返金に合意した場合には、簡易確定手続を行わないこと又は簡易確定手続において通知をしないことを認めるべきである。


(4) 行政の有する情報の特定適格消費者団体への提供 

特例法を改正して、国、地方公共団体及び独立行政法人は、特定適格消費者団体の求めに応じ、当該特定適格消費者団体が被害回復関係業務を適切に遂行するために必要な限度において、事業者の所在、事業の実態、責任財産の所在などの情報を提供することができる旨の規定を設けるべきである。あわせて、当該情報を当該被害回復関係業務の用に供する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない旨を規定すべきである。


(5) 上記に加え、民事訴訟法一般の改正の議論に留意しつつ、下記の制度を検討すべきである。


① オプトアウト方式の導入


② 民事訴訟手続のIT化の進捗に合わせた簡易確定手続、対象消費者が特定適格消費者団体に授権する手続のIT化


③ 文書提出命令の特則など証拠収集方法の拡充


2 被害回復裁判手続を実効化するための諸制度の整備について


(1) 特定適格消費者団体の破産申立権の付与の検討


破産債権に係る金銭の支払義務について共通義務確認の訴えを提起することができる場合において、相手方事業者に破産原因があるときは、特定適格消費者団体が破産の申立てを行うことができることについて検討すべきである。


(2) 集団的な重要消費者紛争解決手続の導入


被害回復裁判手続との連携を強化するため、集団的に紛争を解決することのできる枠組みを重要消費者紛争解決手続に設けるべきである。


(3) オンラインでの紛争解決(ODR)の検討の進捗に合わせた集団的な重要消費者紛争解決手続の導入におけるITの活用を検討すべきである。




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