「民事裁判手続等IT化研究会報告書-民事裁判手続のIT化の実現に向けて-」に対する意見書

2020年6月18日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

日本弁護士連合会は、この度、2020年6月18日付けで「民事裁判手続等IT化研究会報告書-民事裁判手続のIT化の実現に向けて-」に対する意見書を取りまとめ、同日付けで最高裁判所長官、法務大臣及び法制審議会会長宛てに提出しました。


本意見書の趣旨

当連合会は、裁判所へのアクセスを拡充し、審理を充実させ、適正かつ迅速な紛争解決を図るためには裁判手続等のIT化が重要な課題の一つであると位置付け、これを推進すべきであるとしてきた。研究会報告書も民事裁判手続のIT化を推し進めようとするものであり、当連合会は、この基本的方向性に賛意を表するものである。


一方で、具体的な制度設計に当たっては、裁判を受ける権利を後退させないのは当然のこと、裁判の公開、直接主義、処分権主義等の民事裁判における諸原則との整合性を図るべきものと考える。また、利用者が安心して裁判手続等を利用できるためには、情報セキュリティの確保、プライバシーや営業秘密の保護なども不可欠である。さらに、裁判手続等のIT化は、それ自体を目的化してはならないのであって、裁判所へのアクセスを拡充し、身近で利用しやすい民事裁判を実現するための手段という視点も重要である。この視点からは、IT機器を保有しない者やその取扱いに習熟しない者に配慮した手続や支援制度の構築が求められるし、裁判所支部の統廃合など司法過疎を拡大する方向での議論は厳に慎まれるべきである。なお、裁判手続等のIT化は、非弁活動の温床を生む危険性を秘めており、このような弊害を生じさせない制度の設計も必要となる。


当連合会は、研究会報告書のうち、以上に述べた観点から特に重要と思われる論点を中心に意見を述べる。



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