収容・送還の在り方に関する意見書
本意見書について
日弁連は、2020年3月18日付けで「収容・送還の在り方に関する意見書」を取りまとめ、同月26日付けで、法務大臣、出入国在留管理庁宛てに提出しました。
本意見書の趣旨
法務省は、「送還忌避者の増加」や「収容の長期化」を防止する方策、その間の収容の在り方を検討することが出入国管理行政にとって喫緊の課題となっているとして、2019年(令和元年)10月、法務大臣の私的懇談会である「出入国管理政策懇談会」(以下「本懇談会」という。)の下に「収容・送還に関する専門部会」(以下「本専門部会」という。)を設置した。
当連合会は、従前から出入国管理行政における収容・送還に関する制度・運用の問題点を指摘するとともに、その改善に向けた意見を述べてきたところであるが、本専門部会における議論の状況等を踏まえ、上記の「論点整理」に掲げられた各論点について、収容・送還の在り方に関する意見を述べる。
1 「送還の在り方」について
(1) 「退去強制令書の発付を受けた者に対する自発的な出国を促すために考えられる運用上又は法整備上の措置」として、退去強制令書の発付後の任意出国期間や上陸拒否期間の短縮とともに、再上陸許可を保障する制度を設けることを提案する。
(2) 「退去強制令書が発付されたものの本邦から退去しない行為に対する罰則の創設」に対し、反対する。
(3) 「送還の回避を目的とする濫用・誤用的な難民認定申請に対する運用上又は法整備上の措置」として、難民認定申請を簡易に処理する仕組みを創設することや、難民申請中の送還停止効の例外を設けることについては、難民認定の質の向上のための措置が十分に実施されない限り、反対する。
2 「収容の在り方」について
(1) 「収容期間の上限、収容についての司法による審査」に関し、収容の要件を「その者が逃亡し、又は逃亡すると疑うに足りる相当の理由があるとき」に限り収容できると定めた上、その判断は司法によるものとする(少なくとも一定期間の経過後の司法審査を保障する)とともに、収容期間は法律で最長でも6か月以内と定めるべきである。
(2) 「被収容者のプライバシーの確保や被収容者に対する医療、被収容者の心情把握・ケアに関する取組等の被収容者の処遇」について、社会一般の水準と同様の水準の医療の提供及びこのような医療へのアクセスが阻害されないことを確保するとともに、通院・入院等の必要のある者について仮放免を行うことを徹底すべきである。
(3) 「仮放免の要件・基準」について、仮放免の要件を「その者が逃亡し、又は逃亡すると疑うに足りる相当の理由がなくなったとき」又は「収容の必要がなくなったとき」などとした上、明確に法律に規定すべきである。
(4) 「仮放免された者による逃亡等の行為に対する罰則の創設」に対し、反対するとともに、仮放免された者で少なくとも退去強制令書の発付から送還のないまま一定期間が経過した者について、一時的な在留資格あるいは就労の許可を付与する制度を設けることを提案する。
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