公害紛争処理制度の改革を求める意見書

2020年2月21日
日本弁護士連合会

  

本意見書について

日本弁護士連合会は、2020年2月21日付けで「公害紛争処理制度の改革を求める意見書」を取りまとめ、2月25日付けで、内閣総理大臣、総務大臣、公害等調整委員会及び都道府県公害審査会等宛てに提出しました。


本意見書の趣旨

1 公害紛争処理法(以下「法」という。)を次のとおり改正すべきである。 法1条の「公害に係る紛争」を「環境に係る紛争」に改正し、同法の対象を広げ、法律名を「公害紛争処理法」から「環境紛争調整法」に変更する。また、組織名を「公害等調整委員会」及び「都道府県公害審査会」から「環境紛争等調整委員会」及び「都道府県環境紛争調整委員会」に変更する。

なお、その場合の「環境に係る紛争」には次のものを含めることとし、法26条の「損害賠償に関する紛争その他の民事上の紛争」は「損害賠償に関する紛争その他の民事上の紛争又は行政上の紛争」に変更すべきである。

  • (1) 環境基本法2条3項の「公害」(環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の採掘のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。)に係る被害が生ずること。)に係る紛争又は被害が生ずるおそれのある紛争
  • (2) 環境基本法2条1項の「環境への負荷」(人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるもの)のうち相当範囲に及ぶものによって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。)に係る被害が生じ又は被害が生ずるおそれがある紛争


2 都道府県公害審査会(以下「審査会」という。)の調査権限を強化するため、法33条1項ないし3項を次のとおり改正すべきである。

  • 第1項 調停委員会は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをすることができる。
    第2項 調停委員会は、前項の事実調査のため必要があると認めるときは、当該調停に係る事件に関係のある文書又は物件の提出を求めることができ、また、事件に関係のある場所に立ち入つて、事件に関係のある文書又は物件を検査することができる。
    第3項 調停委員会は、第1項の規定による事実調査及び前項の規定による立入検査について、専門委員をして補助させることができる。」。

3 国及び都道府県は、前記1で示した環境に係る紛争の調整のために以下の予算措置及び運用措置を採るべきである。

  • (1) 都道府県は、審査会で環境紛争に係る十分な調査を可能とするために、職員と予算を充実させること。それについて、国は財政的・技術的支援をすること。
  • (2) 審査会と市町村の公害苦情窓口との連携を強化すること。
  • (3) 審査会が積極的に案件を受け入れることが可能となるように公害等調整委員会が支援をすること。



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