不動産特定共同事業法施行規則等の改正に関する意見募集に対する意見書

2019年1月25日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

2018年12月27日、国土交通省は「不動産特定共同事業法施行規則の一部を改正する命令案」、「『不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について』の一部改正」及び「『不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン』(案)」に関する意見募集を行いました。


日弁連は、2019年1月25日付けで「不動産特定共同事業法施行規則等の改正に関する意見募集に対する意見書」を取りまとめ、国土交通省に提出いたしました。


本意見書の趣旨

1 規則案について

(1) 約款の内容の基準(規則案第11条)について

① 約款の内容の基準として、事業者が事業参加者(投資者)に対して、善管注意義務及び忠実義務を負う旨の定めを置くべきである。 

② 対象不動産の売却等に関する同条第2項第12号イに賛成する。ただし、「著しく適正を欠くものではないこと」との表現は「合理的であること」に改めるべきである。

③ 対象不動産変更型契約の追加取得方針の内容に関する同条第2項第15号イについて賛成する。なお、追加取得方針の内容として定められる対象不動産の範囲は、当初の対象不動産と乖離するものであってはならない旨の定めを置くべきである。同号イ(4)の「著しく適正を欠くものではないこと」との表現は「合理的であること」に改めるべきである。

同号リについて、「対象不動産の変更に係る判断が適正に行われることを担保するための必要かつ適当な措置に関する定め」を求める点は重要であり、賛成する。

④ 対象不動産変更型契約における利害関係人との取引について、投資者に対する情報提供を求めること(同条第2項第15号ホ(3))に賛成する。ただし、重要な取引が適正に行われることを担保するために必要かつ適切な措置に関する定めを置くべきである。また、対象不動産変更型でない契約についても、同様の規律を設けるべきである。


(2) 契約成立前の説明事項(規則案第43条)について

① 対象不動産の変更に関する同条第1項第16号の2については、対象不動産の追加取得の方針に関して、追加取得する不動産の所在地域、延べ床面積、構造方法等、その具体的内容(規則案第11条第2項第15号イの(1)~(4)の具体的内容)を説明事項として規則に明記すべきである。

② やむを得ない事由が存する場合以外に契約の解除又は組合からの脱退が認められない契約については、換価の手段が限定されることを、契約成立前の説明事項として規則に明記すべきである。


2 監督指針案について

(1) 許可審査における契約約款の基準適合性(第3-2(1))について

① 対象不動産変更型契約の追加取得方針の記載事項のうち、「その他事業参加者の判断に重大な影響を与える事項」として、「追加取得する対象不動産の稼働率の基準等、当該不動産に係る収益やコンプライアンス等に関する事項」を例示する第3-2(1)⑥に賛成する。

② 対象不動産変更型契約の「変更に係る判断が適正に行われることを担保するための必要かつ適当な措置」として、投資委員会開催や意見書提出等により、弁護士、公認会計士又は不動産鑑定士の意見を聴取し、同意を得ることを例示する第3-2(1)⑬について賛成する。  


(2) その他(第7-11)について     

 対象不動産の変更や追加取得方針の変更が、善管注意義務違反や忠実義務違反となり得ること、また、消費者契約法第10条に抵触する場合があり得ることを指摘する第7-11(2)は重要である。ただし、善管注意義務や忠実義務に違反するものとして損害賠償請求の対象となるケースは、利益相反が生じる対象不動産や追加取得方針の変更の場面に限定されるものではない。そこで、第7-11(2)においては、対象不動産や追加取得方針の変更が例示列挙であることを明記すべきである。


(3) 無許可・無登録業者への対応(第8-3(4))について     

 無許可・無登録業者について、捜査当局との連携を図り、警告書の発出、及び警告措置の公表を行うとする第8-3(4)に賛成する。


3 ガイドライン案(クラウドファンディング)について

(1) 「7.適切な審査」「(4)審査項目等」「②事業計画の内容」「イ.対応が求められる事項」において重点的に確認すべきとされている項目には、対象不動産の所有者の氏名や、私道負担に関する事項、ガス等の供給設備の状況等、対象不動産に関する事項(施行規則第43条第1項第17号所定の事項)を加えるべきである。

また、事業計画の合理性審査について定める「B)b」においては、事業計画の背景に一定の根拠があるかどうかを判断する要素として「賃料・費用がどのような根拠で見積もられているか、売却価格がどのような根拠で想定されているか」が列挙されているところ、これだけでは足りず、「空室・貸倒リスク相当額、賃料下落リスク相当額、維持管理費(長期の修繕費用を含む。)、公租公課、損害保険料等が合理的に織り込まれているかどうか」という要素も加えるべきである。なお、「B)b」が事業計画の背景に求める「一定の根拠」は、「合理的根拠」に改めるべきである。


(2) 「7.適切な審査」「(5)審査結果等の公表」については、審査の概要と当該実施結果の概要が契約成立前の説明事項とされ、電子取引業務における重要事項として閲覧に供することが義務付けられている旨をガイドラインに明記すべきである。



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