旧優生保護法下における優生手術及び人工妊娠中絶等に対する補償立法措置に関する意見書

2018年12月20日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

日弁連は、この度、「旧優生保護法下における優生手術及び人工妊娠中絶等に対 する補償立法措置に関する意見書」を取りまとめ、2018年12月20日付けで、厚生労働大臣に提出いたしました。


本意見書の趣旨

旧優生保護法下における優生手術及び人工妊娠中絶等の被害に対する補償立法措置の在り方について次のとおり意見を述べるとともに、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する立法措置について(基本方針案)」に関して修正すべき点について付言する。


1 国は、旧優生保護法が、自己決定権、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ及び平等権を侵害する違憲な法律であったことを認め、同法下において実施された優生手術及び人工妊娠中絶等の被害者に対して謝罪すべきである。


2 補償の対象となる手術には、同意のない優生手術だけでなく、同意のある優生手術及び人工妊娠中絶も含めるべきであり、法を逸脱した術式の不妊手術及び放射線照射が行われた場合も補償対象とすべきである。


3 被害者本人が補償請求権を行使することなく死亡した場合には、少なくとも、同人の死亡当時に生計を同じくしていた一定範囲の遺族に補償請求権の行使を認めるべきである。


4 被害の認定に当たっては、手術記録の有無や特定の証拠の有無に拘泥することなく、被害者及び関係者の陳述等を積極的に考慮して柔軟な認定を行うべきである。


5 被害の認定機関は、独立性が担保された第三者機関とすべきであり、認定機関の構成委員には、被害者の立場を十分に理解した障がい者団体等の関係者及び法の専門家である弁護士を参加させるべきである。


6 補償制度の広報に当たっては、被害者の有する障がいの特性に配慮した広報の仕方を工夫すべきであり、かつ、行政が把握している被害者については、被害者の現況調査を行った上で、十分にプライバシーに配慮した方法での個別の通知を行うべきである。


7 補償の申請期間は、申告をしにくい性質の被害であること、被害者の有する障がいの特性により補償制度の周知徹底には時間を要すること及び被害の実態調査が不十分であることに鑑み、十分な申請期間を設けるべきである。


8 被害者が被害全般及び補償申請の方法について相談できる窓口を各自治体に設置するとともに、被害者に対してカウンセリング等の支援を提供すべきである。


9 被害の実態調査及び真相究明のための検証を目的とする第三者委員会を設置し、再発防止に向け、全ての個人の存在と決定が等しく尊重される社会を実現するための継続的な取組を行うべきである。




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