知的財産戦略本部「次世代知財システム検討委員会報告書」に対する意見書

 

2016年5月7日
日本弁護士連合会

  

本意見書について


政府・知的財産戦略本部では、毎年、政府の行動計画である「知的財産推進計画」を決定し、現在は「知的財産推進計画2016」の策定に向けた検討が進められており、「検証・評価・企画委員会」において各テーマに応じた検討委員会が設置されています。


このうち、「次世代知財システム検討委員会」では、デジタル・ネットワークの発達に伴う著作権等の法制度の在り方について検討が行われ、本年4月に報告書が取りまとめられました(「次世代知財システム検討委員会報告書」)。


これに対して、当連合会では、2016年5月7日付けで意見書を取りまとめ、政府・知的財産戦略本部に提出いたしました。


[
関連意見書]

2016年1月29日 「知的財産推進計画2016」の策定に向けた意見募集に対する意見書

 

本意見書の趣旨

 

1 デジタル・ネットワークの進展により著作権を含む情報の利活用が一層多様化していく中、変化に対応し社会全体の利益を最大化していくためには、「多様な政策手段を活用した柔軟な解決が図られる新たな著作権システム」(次世代著作権システム)を構築していく必要があること、及び「次世代著作権システムの実現に向けては、国による制度的対応、民間によるライセンス円滑化、官民連携した保護の実効性の強化など、多様な視点に基づき、具体的な取組を進めていくこと」が必要であるとする本報告の方向性に賛成する。


2 前項の方向性を実現するための具体的な取組として本報告に記載されている事項について、それぞれ次のように考える。

(1) 「新たなイノベーションに柔軟に対応するとともに、日本発の魅力的なコンテンツの継続的創出を図る観点から、デジタル・ネットワーク時代の著作物の利用の特徴に対応するための一定の柔軟性のある権利制限規定に係る検討を進める」ことは、これを実現する方策の一つとして有用と考え、賛成する。

(2) また、前項の検討に併せて「著作権を制限することが正当化される視点を総合的に考慮することを含むより一層柔軟な権利制限規定」について、その効果と影響を含めた検討を行うことについても、前記(1)で述べられた観点を実現する方策の一つとして有意義であると考える。

その検討を行うに際しては、①柔軟な制限規定を必要とする立法事実を的確に踏まえた緻密な議論、②既存のライセンススキームや、権利者及び利用者の協働による合理的なライセンス体制構築に向けた動きに対する影響、③権利者に対する正当な対価の還元の視点等を十分に考慮すべきである。

(3) 「新たな柔軟性のある権利制限規定」の導入に当たっては、予見可能性の向上等の観点から、対象とする行為等に関するガイドラインの策定を含めた具体的な検討を行うことも有意義であると考える。

(4) また、「多様性・柔軟性を内包した著作権システム」を構成するため、拡大集中許諾の導入可能性、報酬請求権付権利制限規定の活用等についても今後検討して行くべきである。

(※本文はPDFファイルをご覧ください)