精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域間格差の是正に関する意見書
- 意見書全文(PDFファイル;132KB)
2015年7月17日
日本弁護士連合会
本意見書について
当連合会は2015年7月17日の理事会で「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域間格差の是正に関する意見書」を取りまとめ、同年7月23日に厚生労働大臣宛てに提出しました。
本意見書の趣旨
国(厚生労働省)は、この度精神障害や知的障害に係る障害年金の認定に運用上大きな地域間格差がある問題につき、実態調査に基づき、2015年2月から「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」を設け、地域間格差是正のための方策として、全国統一の等級判定のガイドラインを作成することを予定している。
精神・知的障害に係る障害年金の等級認定については、かねてから、その認定基準の曖昧さ等から不合理な不支給事案が散見され、また、地域や認定医による差も大きいことや診断書作成医師の専門性が十分でないこと等が、実務の現場で懸念されていたものであり、年金受給権の保障を求めて、障害年金の認定や等級に見直しを求める訴訟も各地で提起されてきた。当連合会としても、障害年金制度が障害者の所得保障に不可欠な制度であることに鑑み、その受給権の充実を図るべきことを折々に求めてきた。
この度の本検討会の検討については、障害年金認定の地域間格差の是正が図られること自体は必要なことであるが、その改善の方向性は、憲法第25条、国民年金法及び厚生年金保険法の趣旨に基づき、本来認定されるべき人が地域によっては認定されていない事態を改善するという障害者の年金受給権の確立・充実につながるものでなければならず、地域間格差是正の名の下に障害年金の支給抑制に繋がることがあってはならない。
そこで、当連合会は、国に対し、以下の意見の趣旨で述べる観点からの見直しを行うよう求める。
<意見の趣旨>
地域間格差の是正のため、等級判定のガイドラインを設けること自体は必要やむを得ないとしても、本検討会が想定しているところの、診断書の「日常生活能力の程度」及び「日常生活能力の判定」の項目を点数化し、等級認定を類型化する目安を設定することは、精神・知的障害における数値化・類型化しにくい障害の特性が捨象され、画一的な運用となる可能性が高く、本来障害年金を受給すべき障害者が切り捨てられるおそれがある。
したがって、本件ガイドラインによる上記の目安の設定により、点数化の結果が等級認定に直結されるべきではなく、「日常生活能力の程度」及び「日常生活能力の判定」には反映されにくい「生きづらさ」など、個別の障害特性や事情を総合考慮した上で等級認定を行うことができるよう、柔軟な運用が可能な目安が設定されるべきである。
また、等級認定に当たっては、障害者本人、家族、支援者等から日常生活の状態に関する情報が積極的に収集され、これを十分に勘案しうるものとされるべきである。
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