難民認定制度の見直しの方向性に関する専門部会報告に対する意見書

2015年3月19日  
日本弁護士連合会


 

本意見書について

日弁連では、2015年3月19日付けで、「難民認定制度の見直しの方向性に関する専門部会報告に対する意見書」を取りまとめ、4月10日付けで法務大臣に送付いたしました。

 

本意見書の趣旨

1 難民該当性の判断基準と保護対象の明確化について
難民該当性判断の規範的要素を、国際的な文書、先例及び学術研究の成果などを参照して可能な限り一般化・明確化し、また、国際的な保護を要する対象者を明確化するに当たっては、これらの基準をもれなく適用するため、法令に明記し、あるいは公表するべきである。さらに、いわゆる「新しい形態の迫害」について、ジェンダーに起因する迫害に加え、非国家主体による迫害のおそれや性的指向に起因する迫害のおそれがある場合なども難民に該当するものとして明確にするべきである。


2 補完的保護の対象と手続の明確化について
難民には該当しないものの、保護することが必要な者に対して与えられる補完的保護の対象を明確化するに当たっては、補完的保護に関するEU資格指令で採用されている規定などを参考にしつつ、これを実効的なものとするため、これらの保護対象を法令に明記し、あるいは公表するべきである。


また、手続の在り方について、補完的保護の対象を適正に判断するためには、難民認定手続において並行して判断されるべきであり、異議申立手続においても難民審査参与員が関与して判断されることとすべきである。


3 申請者への手続保障について
特別の配慮を要する申請者に対する配慮を行い、また、これらの申請者については、インタビューに弁護士等が立ち会うことを試行的に実施することは、手続的適正のために一歩前進であるが、全ての難民認定申請者について、一次手続の段階から弁護士のインタビューへの立会いを可能とするべきである。


4 手続の透明性・公平性の確保について
申請者の出身国情報や国際情勢に関する幅広い情報収集と分析を行う専従体制を整備するに当たっては、その情報を、難民認定申請者やその代理人等が閲覧することができるようにするべきである。


5 審査担当者の独立性・専門性の向上について
難民認定審査は、入管行政等から独立した審査機関によって行われるべきであるが、当面、現状の機関による難民認定審査が存続するとした場合でも、難民審査参与員制度の抜本的見直しが急務であり、常勤の難民審査参与員の採用などによる専門性の向上が図られるべきである。


また、難民審査参与員の難民認定意見を、法務大臣が何ら正当な理由も示さずに覆す事態は、直ちに改めるべきである。


6 簡易迅速処理体制や再申請の抑制策の提言について
濫用的な申請などに対する本格審査前の簡易迅速処理や、当初の申請から事情変更がない再申請などの抑制対策の検討については、1ないし5に記載した難民認定制度改善のための施策を実現して真の難民がもれなく保護される制度的な保障をすることとあいまって、このような制度の導入の是非が論じられるべきである。また、上記の制度を検討するとしても、「濫用的な申請」などの意義を明確にすると同時に、全申請者へのインタビューの実施、不服申立ての道を確保することなどの手続保障が行われるべきである。

 

 

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