健康保険法等に基づく指導・監査制度の改善に関する意見書


icon_pdf.gif意見書全文(PDFファイル;527KB)

 2014年8月22日
  日本弁護士連合会


 

本意見書について

日弁連は、2014年8月22日付けで健康保険法等に基づく指導・監査制度の改善に関する意見書を取りまとめ、2014年8月25日に、厚生労働大臣及び各都道府県知事に提出しました。

 

本意見書の趣旨

当連合会は、厚生労働大臣及び都道府県知事に対し、健康保険法、国民健康保険法等(以下「健康保険法等」という。)に基づいて実施する保険医療機関及び保険薬局並びに保険医(医師・歯科医師)及び保険薬剤師(以下「保険医等」という。)に対する保険診療(調剤を含む。)の指導・監査の制度に関し、指導・監査が、保険医等に対する診療報酬の返還請求や保険医指定取消処分などの不利益処分に至る契機となる性格を有していることに鑑み、その対象となる保険医等の、適正な手続的処遇を受ける権利を保障するため、以下の点について改善、配慮及び検討を求める。


1 選定理由の開示
厚生労働大臣若しくは地方厚生(支)局長又は都道府県知事は、個別指導の対象となる保険医等を決定したときには、当該保険医等に対し、個別指導の根拠規定及び目的等と同時に、当該保険医等が指導対象として選定された理由について通知すること、あるいは、当該保険医等の求めに応じ選定された理由について開示するよう改善すべきである。


2 指導対象とする診療録の事前指定
個別指導の対象となる保険診療に係る診療録の指定は、個別指導を実施する適切な準備を行うために必要かつ相当な一定期間前までに連絡し、個別指導される保険医等が適切な準備を行う時間的余裕を与えるよう改善すべきである。


3 弁護士の指導への立会権
指導・監査の透明性の確保、保険医等の防御の機会を確保する観点から、弁護士の立会権が、保険医等の権利として認められるよう改善すべきである。


4 録音の権利性
指導・監査の実態の事後的検証を可能とすべく、指導・監査の場において、これを録音・録画することが、保険医等の権利として認められるよう改善すべきである。


5 患者調査に対する配慮
指導・監査における患者調査を行うに当たっては、保険医等への信用の毀損等を最小限とし、また、事実を適確に把握できる調査手法をとり、調査結果は保険医等に開示するよう改善すべきである。


6 中断手続の適正な運用について
厚生労働大臣若しくは地方厚生(支)局長又は都道府県知事は、個別指導の中断措置の採否に際しては、その必要性を真摯に検討した上で、安易に用いることのないよう、その運用に注意を払うよう配慮すべきである。また、個別指導の中断措置を講じるに際しては、これにより保険医等に対する精神的な負担等が生ずることにも配慮し、可能な限り中断期間を短期間にとどめ、いたずらに中断期間が長期化することは厳に慎むよう配慮すべきである。


さらに、厚生労働大臣若しくは地方厚生(支)局長又は都道府県知事は、指導・監査を統括する立場として、適切な個別指導の実施を可能とするためにも、中断事案の件数及び中断期間の状況など、その運用実態について定期的に調査を行い、その実態の正確な把握に努めることを検討すべきである。


7 指導と監査の機関の分離及び苦情申立手続の確立
指導・監査における公正な判断とこれに対する信頼を確保し、かつ、指導監査を受ける保険医等の権利を保障するために、指導・監査に対する苦情申立手続を導入するとともに、例えば、指導と監査を行う機関を分離することなどを検討すべきである。

 

 

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