不当景品類及び不当表示防止法の課徴金制度導入等に伴う制度設計に関する意見書

 2014年2月21日
 日本弁護士連合会


 

本意見書について

当連合会は、2014年2月21日付けで「不当景品類及び不当表示防止法の課徴金制度導入等に伴う制度設計に関する意見書」を取りまとめ、2月28日付けで内閣総理大臣、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、内閣府消費者委員会委員長、消費者庁長官、公正取引委員会委員長宛てに提出しました。

 

本意見書の趣旨

 

1 国は,早急に景表法の改正による同法への課徴金制度導入等を下記のとおりの内容により実現すべきである。

(1) 課徴金を賦課する場合の主観的要件については,故意又は過失(軽過失)の存在を必要とするが,不当表示の存在が客観的に認められる場合(商品・役務等の内容が客観的真実に合致しない有利誤認表示又は優良誤認表示である場合)には,過失の存在が推定されるものとして挙証責任を転換し,不当表示の主体である事業者において,無過失であることの本証を行った場合には,課徴金を課さないこととすべきである。

(2) 課徴金率は,景表法第4条第1項の不当表示を事前抑止するために十分な水準に設定すべきである。

(3) 客観的に不当表示の存在が認められる限りは,消費者庁において,課徴金を課するか否か決定することができるという内容の完全な裁量的賦課は,原則として認めるべきではないが,対象事業者の規模や予測される課徴金額が非常に少額に留まる等,一定の客観的要件の下,例外として課徴金を課さないとの制度とすることが考えられる。

(4) 独占禁止法上のリーニエンシー制度(カルテル・談合の構成事業者が違法な基本合意の存在について公取委に対して自己申告した場合に,一定順位まで課徴金の減免を認める制度)類似の仕組みとして,不当表示における課徴金減免制度の導入が検討されるべきである。

(5) 逆に同種の不当表示を反復している等,一定の客観的要件の下で,課徴金率の加算を行うことが検討されるべきである。

(6) 課徴金賦課の手続については,従前から消費者庁の措置命令に対しては,被摘発事業者は,行政不服審査の申立てや取消訴訟を裁判所に提起して争う機会が与えられており,課徴金賦課との関係においても,特段,変更の必要は認められないものと考えられる。

 

2 課徴金財源の使途について

(1) 不当表示の摘発によって納付された課徴金の使途については,直ちに国庫の一般会計に納入されるのではなく,例えば,消費者庁内に消費者被害の抑止・回復のための基金を作って納付させる,あるいは特別会計に関する法律第2条所定の「特別会計」に組み入れる等の方法によって,消費者被害の回復に役立つ使途に利用出来る制度枠組みが検討されるべきである。

(2) そして,申請により拠出又は貸与するような制度として,適格消費者団体による差止請求,特定適格消費者団体が集団的消費者被害回復のための訴訟制度を遂行するための費用(例えば,第一段目の手続終了後の消費者への通知・広告手続の費用,提訴前の仮差押え手続の保証金等が考えられる。),その他,これら以外の消費者被害の事前抑止又は被害回復に役立つ使途に用いることができるとすることが考えられる。

 

3 消費者の申告制度の新設,特定適格消費者団体等の権限強化について

(1) 特定事業者による不当表示が存在すると思料する場合に,特定適格消費者団体等又は一般私人が書面により当該不当表示(特に優良誤認表示)の存在を消費者庁又は都道府県に対して申告した場合に,消費者庁又は都道府県は,一定期間内にこれに対する評価と対応を回答しなければならないとする制度(いわゆるスーパーコンプレイン)を新設すべきである。

(2) 不当表示(特に優良誤認表示)に対する消費者庁又は自治体による措置命令・課徴金納付命令が確定した場合は,特定適格消費者団体は,かかる確定した消費者庁の評価を前提として,集団的消費者被害回復の訴訟を提起できるとする制度を新設すべきである。その場合,特定適格消費者団体は,同制度の二段階目の手続である個別の消費者の債権確定手続の審理の中で,その個別損害立証・算定のために,消費者庁に対する資料開示と求意見申立てを行う権限を付与すべきである。

 

(※本文はPDFファイルをご覧ください)