財産開示制度の改正及び第三者照会制度創設に向けた提言
- 提言全文(PDFファイル;36KB)
2013年6月21日
日本弁護士連合会
本提言について
日弁連は、2013年6月21日付けで「財産開示制度の改正及び第三者照会制度創設に向けた提言」を取りまとめ、同26日付けで法務大臣に提出しました。
本提言の概要
1 財産開示手続の改正
(1) 強制執行不奏功等要件の廃止
民事執行法197条の強制執行不奏功等要件を削除し、原則として強制執行開始要件が備わっていれば財産開示決定をすることとし、例外的に「申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得るに十分な債務者の財産を容易に探すことができると認められる等正当な理由がないとき」には、職権又は債務者の申立てにより、財産開示の申立てを棄却できるものとすべきである。
(2) 再施制限規定の廃止
民事執行法197条3項を削除すべきである。
(3) 過去の財産処分についての開示義務
財産開示期日における債務者の陳述すべき事項について、次の一定期間の過去の財産処分について開示義務を課するよう民事執行法199条を改正すべきである。
① 財産開示期日前3年以内に債務者が行った不動産の譲渡
② 財産開示期日前3年以内に債務者が行った緊密な関係を有する者(自然人にあっては一定範囲内の親族、法人にあっては代表者及び一定要件の者)に対して行った不動産以外の財産の有償譲渡
③ 財産開示期日前3年以内に債務者が行った無償の給付であって、安価な慣習上の贈与といえないもの
(4) 刑事罰による制裁の実効性確保
財産開示手続の実効性確保のために不出頭、宣誓拒否、虚偽陳述に対して一般的に刑事罰を科するというのではなく、そのなかでも違法性が高い虚偽陳述について100万円以下の罰金刑とする刑事罰を科するように改正すべきである。ただし、刑事罰の対象は、財産開示期日時点の財産情報に関する陳述に限定し、過去の資産処分に関する陳述を除くものとする。
(5) 財産開示手続違反者名簿制度の創設
財産開示手続において、以下の内容を有する財産開示手続違反者名簿制度を創設すべきである。
① 財産開示手続に関する執行裁判所は、正当な理由のない開示期日への不出頭、財産目録の提出拒否、宣誓拒否や虚偽財産目録の提出をした場合に、その財産開示を申し立てた債権者の申立てにより、財産開示手続違反者名簿に一定事項(債務者が自然人である場合は、氏名、生年月日、住所、法人である場合は、商号、所在地等)を登載する旨の決定をしなければならない。
② 名簿は、誰でも閲覧、謄写することができる。
③ 名簿登載から5年を経過した場合、又は弁済等により債権者が同意した場合等には抹消される。
2 第三者に対する財産照会制度の創設
以下の内容を有する第三者照会制度を創設すべきである。
① 執行裁判所は、財産開示手続を申し立てることができる債権者の申立てにより、官庁、公署、銀行、信託会社、証券会社、債務者の使用者その他の者に対し、送達の前2年迄遡り、債務者の不動産、預貯金、信託財産、株式、収入、規則で定めるその他の事項に関して必要な照会をすることができる。
② 照会を受けた第三者は、これに回答すべき義務を負い、正当な理由なく回答を拒否した場合又は虚偽の回答をした場合には30万円以下の過料とする
③ 執行裁判所は、照会による情報の取得又は照会の結果について、遅滞なく申立人に通知しなければならない。
④ 執行裁判所は、申立人が前③の通知を受け取ってから8週間後に、照会による情報の取得又は照会の結果について、債務者に通知しなければならない。
⑤ 債権者が、得られた債務者の財産又は債務に関する情報を、当該債務者に対する債権をその本旨に従って行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供した場合には30万円以下の罰金に処する。
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