発電用軽水型原子炉施設に係る新安全基準骨子案に対する意見書

2013年3月14日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

日弁連は、2013年3月14日付けで「発電用軽水型原子炉施設に係る新安全基準骨子案に対する意見書」を取りまとめ、3月25日付けで原子力規制委員会委員長に提出しました。
 
はじめに



当連合会は,脱原発を速やかに行うことを求めており、福島第一原発事故後の2011年7月15日付けで「原子力発電と核燃料サイクルからの撤退を求める意見書」を取りまとめ、原子力発電所について「10年以内のできるだけ早い時期に全て廃止する。廃止するまでの間は、安全基準について国民的議論を尽くし、その安全基準に適合しない限り運転(停止中の原子力発電所の再起動を含む)は認められない。」との提言を行った。本件事故のような重大な人権侵害を生じる原発事故は、二度と起こしてはならないものであり、現在、原子力規制委員会において検討されている新基準はその目的を達成するためのものでなければならない。本意見書はそのような観点から原子力規制委員会が策定している基準の在り方について意見を述べるものである。



第1 意見の趣旨



1 安全基準策定のスケジュールについて



福島第一原発事故の事故原因を究明し、必要な改定を全て行い、改定安全指針類によるバックフィットを厳格に行うという基本方針を確立することが第一である。拙速な指針改定のタイムスケジュールを白紙に戻すべきである。



2 原子炉立地にかかる安全指針について



(1) 万が一の事故が起きても周辺に放射線被害を及ぼさない立地条件を厳格に適用できる指針に改定すべきである。



(2) 現実に発生した福島第一原発事故を踏まえて、仮想事故の評価方法を見直し、非居住区域、低人口地帯の範囲を広域なものに見直すべきである。



(3) 立地評価の不合理性を改めずにシビアアクシデント対策の有効性評価に置き換えることは、形を変えた不合理な基準の策定にすぎない。立地指針に関係する安全評価指針を改定すべきである。



3 安全設計・評価指針について



(1) 設計基準事故の原因を内部事象に限定した安全設計評価を改め、自然現象等外部事象を原因とする設計基準事故評価をすべきである。



(2) 単一故障の仮定で安全性評価をすることでは不十分であり、共通原因故障を想定した安全基準を策定すべきである。


4 耐震設計審査指針について



2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震を踏まえ、過去の歴史、地震にとらわれることなく、これまでの地震・津波に関する知見に基づき、可能な限り安全側に立って、耐震設計審査指針を根本から見直すべきである。



さらに、そのようにして想定した地震・津波を超える地震・津波が発生することがあり得るのであるから、さらに安全側に立った地震・津波を想定する指針を策定すべきである。



5 重要度分類指針について



地震時の共通原因故障発生を踏まえ、重要度分類指針を見直すべきである。外部電源は、その信頼性を向上させるために、重要度分類クラスⅠ、耐震性能Sクラスにすべきである。また、重大事故時の対応上必要な構築物、系統及び機器全体を、重要度分類クラスⅠ、耐震性能Sクラスに格上げすべきである。



6 シビアアクシデント(過酷事故)対策について



(1) 必要と考えられるシビアアクシデント(過酷事故)対策は全て必要であり、そのシビアアクシデント(過酷事故)対策がなされていない原発は再稼働させないことを明記すべきである。



(2) 安全確保のための安全指針として第一に重要なのは、「放射性物質の環境への多量の放出を確実に防止する」という3層までの安全規制である。したがって、設計基準事故の対象を拡大して安全指針を強化すべきである。

(※本文はPDFファイルをご覧ください)