パートタイム労働法改正に向けた意見書

2012年11月15日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

日弁連は、2012年11月15日付けでパートタイム労働法改正に向けた意見書をとりまとめ、厚生労働大臣及び内閣府特命担当大臣(男女共同参画)宛てに提出いたしました。

   

本意見書の趣旨

1 パートタイム労働法第8条(通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止)は均等待遇の原則に基づく差別禁止規定であることを維持し、均衡待遇の原則の実効化は同法第9条の改正によるべきである。


2 パートタイム労働法第8条(通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止)について、以下のとおり改正すべきである。


(1) パートタイム労働法第8条第1項の定める均等待遇の3要件から「当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもの」(無期労働契約要件)、及び「当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの」(人材活用の仕組・運用の同一性)の2つの要件を削除し、「職務の内容の同一性」のみを要件とすべきである。


(2) 同条は「職務の内容の同一性」について「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一であることとしているが、このうち「当該業務に伴う責任の程度」が同一であることの要件については、削除すべきである。



(3) 以下のような規定を設けて同条の禁止規定に違反した場合の私法上の効力を明記すべきである。
「事業主が通常の労働者と職務が同一である短時間労働者に対して差別的な取扱いをした場合に、それが労働契約の内容となっている場合は、その部分についてはこれを無効とし、無効となった部分は通常の労働者と同一の基準で労働契約が補完されるものとする。」


3 同法第9条(賃金に関する均衡待遇の努力義務)について、以下のとおり改正す べきである。


(1) 同法第9条第2項については削除すべきである。


(2) 同法第9条第1項については、次のとおり改正し、違反の場合の私法上の効力を付与すべきである。



「短時間労働者(前条の規定する通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く。)の労働契約の内容である労働条件が、短時間労働者であることにより当該事業所に雇用される通常の労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容、その他の事情を考慮して合理的なものでなければならない。」



(3) 仮にパートタイム労働法第9条が「賃金」のみを対象とする規定のままとなるとしても、同条の対象となる「賃金」は職務関連賃金に限定すべきではなく、通勤手当や退職手当などの職務関連賃金以外についても給付の目的・性質に照らし、同条の対象となり得ることを指針等に明示すべきである。


(※本文はPDFファイルをご覧ください)