東京電力株式会社が公表した「避難指示区域の見直しに伴う賠償の検討状況について」に関する意見書

2012年4月27日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

日弁連は、2012年4月27日付けで「東京電力株式会社が公表した「避難指示区域の見直しに伴う賠償の検討状況について」に関する意見書を取りまとめ、同日付けで、文部科学大臣、経済産業大臣、原子力損害賠償支援機構理事長、原子力損害賠償紛争審査会委員及び原子力損害賠償紛争解決センター等に提出しました。
 

本意見書の趣旨

第1 意見の趣旨



1 東京電力株式会社は本年4月25日、「避難指示区域の見直しに伴う賠償の検討状況について」(以下「東京電力財物賠償方針」という。)を公表したが、原子力損害の賠償については法律上原子力損害賠償紛争審査会が一般的指針を策定するのであるから、福島原子力発電所事故の加害者である東京電力ではなく、国が責任を持って財物賠償の方針及び基準を定めるべきである。



2 「東京電力財物賠償指針」には以下の点で看過し難い問題があることを踏まえ、財物賠償の方針及び基準は、原子力損害賠償紛争審査会又は原子力損害賠償紛争解決センター総括委員によって定めるべきである。



(1) 帰還困難区域の不動産のみ全損扱いとしているが、帰還困難区域、居住制限区域及び避難指示解除準備区域の建物内に残置された動産類及び居住制限区域及び避難指示解除準備区域の不動産についても、被害の実情に応じ、被害者が望む場合には、原則として全損として扱うべきである。



(2) 仮に住宅修復費用の賠償を受けて被災地に帰還しても、地域の生活インフラが回復せず再移住を余儀なくされるような場合にも、全損として扱う途を残しておくべきである。



(3) 建物等の財物評価は事故発生前の価値を基準としているが、被害者は転居あるいは新規移転先で新たな建物等を取得しなければならないのだから、原則として経年減価を考慮しない再取得価格を基本とした賠償がなされるべきであり、同等の配慮は、中古市場が存在しないか、あっても中古品の調達が困難な事業用の設備機器についてもなされるべきである。



(4) 関係自治体等の復興の構想等も視野に入れ、調整を図りつつ、地域復興と被害者の生活再建に確実につながるような損害賠償の方針を確立するべきである

 

(※本文はPDFファイルをご覧ください)