防災対策推進検討会議中間報告に対する意見書
- 意見書全文(PDFファイル;53KB)
2012年4月20日
日本弁護士連合会
本意見書について
日弁連は、この度、「防災対策推進検討会議中間報告に対する意見書」を取りまとめ、2012年4月25日付けで中央防災会議、内閣総理大臣、復興大臣、内閣府特命担当大臣(防災)、国土交通大臣及び厚生労働大臣に対し提出しました。
本意見書の趣旨
1 基本的視点について
(1) 防災対策は、自然災害だけでなく、原子力発電所や石油コンビナート等の危険性のある人工施設による災害も検討の対象とするべきである。
(2) 首都圏以外の都市部の災害も検討の対象とするべきである。
(3) 防災対策の目的を「日本の持続的な発展」としている点を改め、あくまでも一人ひとりの国民の生命と基本的人権の保護にこそ基本的な目的があるとするべきである。
2 東日本大震災の教訓について
(1) 福島第一原子力発電所事故の教訓を盛り込むべきである。
(2) 政府が行わなかった対策と、対応が遅延した対策を、不作為又は遅延した 理由も付して明記するべきである。
(3) 問題点を法制度ごとに整理するべきである。
3 災害対策基本法について
(1) 警戒区域の設定・解除について、住民意向の反映や第三者機関の関与等により判断の適正さを確保し、住民に対する損失補償制度を創設するべきである。
(2) 地域防災計画の独自性を尊重し、上位の防災計画等との抵触を禁じるのではなく、相互の調整によって対策の矛盾防止を図るべきである。
(3) 防災基本計画や地域防災計画に、弁護士等の専門家と連携の上、被災者のための相談窓口を設置する旨を明記するべきである。
(4) 地方公共団体の作成する地域防災計画に、他団体からの支援の受け方等を明記した受援計画を盛り込むべきである。
(5) 防災基本計画や地域防災計画に、義援金の取扱いを明記するべきである。
(6) 災害対策基本法に、防災基本計画や地域防災計画に高齢者、障がい者の安否確認等のための個人情報保護の例外規定を盛り込むべきである。
4 災害救助法について
(1) 現金の支給を行うべきである。
(2) 応急仮設住宅について、木造仮設住宅の活用、民有地の敷地の積極的活用、仮設入居後の救助措置の継続、仮設住宅団地内の施設等の充実、被災者の孤立防止策、居住環境のモニタリング等の改善措置を盛り込むべきである。
(3) 応急仮設住宅の提供に代わる措置として、みなし仮設住宅だけでなく、民間賃貸住宅の賃借に対する家賃補助、自力仮設住宅に対する補助金支給を行うべきである。
(4) 住家の応急修理について、全壊住宅も対象に含め、所得要件は撤廃すべきである。
(5) 救助の種類に「福祉」を追加し、福祉関係者に救助費の支弁を行えるように改め、福祉サービスの提供が継続できるようにするべきである。
(6) 災害救助費は全額国庫負担とするべきである。
(7) 災害救助法の運用原則として、新たに「人命最優先の原則」「柔軟性の原則」「生活再建継承の原則」「救助費国庫負担の原則」「自治体基本責務の原則」「被災者中心の原則」を立てて、抜本的な運用改善に努めるべきである。
(8) 災害救助法の所管庁を厚生労働省から内閣府に移管すべきである。
5 災害弔慰金等法について
(1) 災害関連死の認定手続の仕組みを確立するべきである。
(2) 災害障害見舞金の支給対象者を身体障害者手帳及び精神保健福祉手帳の障害等級1級又は3級程度まで拡張し、年金方式による上乗せ支援金を支給するべきである。
(3) 生計維持者か否かで支給額に生じる差を撤廃するべきである。
6 被災者生活再建支援法について
(1) 家屋被害認定は、専ら被災者支援を図ることを目的にして弾力的対応に努め、認定に対する不服に対しては判定委員会を設置して対処するべきである。
(2) 被災者生活再建支援法を、自然災害に起因する原発事故の被災者にも適用し、支援金を支給するべきである。
(3) 救済範囲を半壊、一部損壊、地盤被害にも拡げ、対象を住家以外にも拡張し、支援金を大幅に増額するべきである。
(4) 支援金の財源を国庫負担とするべきである。
(5) 被災者生活再建支援法の適用を地域で指定するのではなく、特定の災害単位で指定するべきである。
7 災害時の医療関係者の業務の保護
災害時に実施されるトリアージ(利用可能な医療資源が医療需要を超えた場合に、医療実施の優先順位をつける作業)について、医療関係者の免責の要件について定める法律の制定を検討するべきである。
8 災害復興基本法の制定
いかなる災害にも共通する恒久法として、被災者が復興の主体であることなどを定めた災害復興基本法の制定を検討するべきである。
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