有期労働契約に関する労働契約法改正案に対する意見書

2012年4月13日
日本弁護士連合会


 

意見書について

日弁連では、2012年4月13日付けで、「有期労働契約に関する労働契約法改正案に対する意見書」をとりまとめ、同月23日付けで、厚生労働大臣に対して提出しました。
 

意見書の趣旨

我が国の有期契約労働者が低賃金で不安定な雇用の下に置かれている現状と問題点を踏まえ、「労働契約法の一部を改正する法律案」(以下「改正法案」という。)を修正し、以下のとおり有期労働契約に関する規制を強化することを求める。
 

1 労働契約は、期間の定めのないものが原則となること(無期原則)を明文化すること。


2 その例外となる有期労働契約の締結は、合理的理由(一時的・臨時的に雇用すべき理由)がある場合に限るとする入口規制を設けること。


3 有期労働契約の無期契約への転換(改正法案18条)については、有期労働契約の「通算契約期間」の上限を1年、どんなに長くとも3年とし、期間を超えた場合には無期契約への転換をみなす出口規制を設けるとともに、期間の算定に当たっては「空白期間」を設けないこと。


4 期間の定めのない労働契約への転換後の労働条件については、労働契約法3条2項との整合性を考慮し、改正法案18条のうち「この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある場合を除く。)とする。」との部分は削除すべきである。



5 雇止め制限法理の明文化(改正法案19条)に関しては、最高裁判例よりも狭く解釈されかねない要件を付加すべきではなく、労働者からの契約更新の申込みがあること及び期間満了後遅滞なく契約更新の申込みがあることを要件から削除すべきであり、最高裁判例の文言及びそれを受けた労働政策審議会建議に従い「有期労働契約があたかも無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、又は労働者においてその期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合には、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない雇止めについては、当該契約が更新されたものとして扱う」旨の文言とすること。



6 不更新条項の濫用禁止規定を設けるとともに、有期労働契約の「通算契約期間」の上限に満たない場合も同法理の適用がある旨を明文化すること。



7 改正法案20条の規定に関し、「職務の内容及び配置の変更の範囲」は、労働条件格差の合理性判断に当たって基準とするにふさわしいものとはいえないことから、これを考慮要素とすべきではなく、削除すべきであり、仮に、これを考慮要素とする場合であっても、当該企業の正規労働者に対する配置転換の事情に応じて、個別具体的に判断するものでなければならないことを、指針等で明確にすべきこと。



また、同20条に関し「~期間の定めのない労働契約を締結している労働者」に続けて、「又は労働者であった者あるいは労働者となり得る者」を加え、過去との比較、将来との比較を可能とすべきこと。



8 改正法案20条の規定では、条文の民事的効力が不明確であるから、この規定に反する不合理な労働条件は無効であることを明確化するとともに、期間の定めがあることによる労働条件の相違に「合理性」があることの証明責任を使用者に負わせることを明記すること。



9 抜本的には、有期契約労働者(無期転換後の無期雇用労働者も含む。)と正規労働者の賃金格差や男女の賃金格差を解消するために同一価値労働同一賃金の原則を実効性ある内容で法制化すること。

 

 

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