法曹人口政策に関する提言

2012年(平成24年)3月15日
        日本弁護士連合会


 

  1. 弁護士のアイデンティティは「プロフェッション」性、すなわち、高度の専門性と公益的性格にある。したがって、弁護士には市民から信頼されるに相応しい学識、応用能力と弁護士職の公益的性格の自覚が求められる。そのようなプロフェッション性から導かれる「質」を確保するためには、必要な水準に達しない者にまで弁護士資格を付与することがないように、司法試験の合格者数を、法曹養成制度の成熟度に見合うものにしなければならない。


    また、「市民にとってより身近で利用しやすく頼りがいのある司法」を実現するためには、現実の法的需要や司法基盤整備の状況ともバランスの取れた法曹人口の「適正さ」を確保すべきである。


  2. 現状では、法曹養成制度の成熟度、現実の法的需要、司法基盤の整備状況のいずれに対しても、また裁判官・検察官の増員の程度と比べても、弁護士人口増員のペースが急激であり過ぎる。そのため法曹養成過程における「法曹の質」の維持への懸念、新人弁護士の「就職難」等によるOJT不足から実務経験・能力が不足した弁護士が社会に多数増えていくことへの懸念、法曹志望者の減少などの深刻な問題を引き起こしている。市民のための司法を実現するためには、これらの問題を解決する必要がある。そのためには、いまや法曹人口の急増から「状況に応じた漸増」へと、速やかに移行すべきである。


    司法制度改革推進計画(2002年3月19日閣議決定)のうち「平成22年ころには司法試験の合格者数を年間3,000人程度とすることを目指す」との指針を示した部分は、現状ではもはや現実的ではなく、抜本的に見直す必要がある。


  3. 司法試験合格者数をまず1500人にまで減員し、更なる減員については法曹養成制度の成熟度や現実の法的需要、問題点の改善状況を検証しつつ対処していくべきである。


    司法試験合格者の減員は法曹人口の減少を直ちに意味せず、急増か漸増かという増員ペースの問題である。司法試験の年間合格者数を1500人にまで減員しても、2027年頃には法曹人口は5万人規模に達し、2053年頃には6万3000人程度で均衡する。年間合格者数を1000人にしても、2043年頃には法曹人口は約4万9000人に達し、2053年頃には4万2000人程度で均衡する。


  4. 将来的な法曹人口は、現実の法的需要や司法基盤整備の状況、法曹の質などを定期的に検証しながら、検討されるべきである。その検証を踏まえて、司法試験合格者数についても定期的に検討すべきである。

 

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【関連資料】

  icon_pdf.gif法曹人口政策関連資料集 (PDFファイル;14MB)