「消費者安全調査委員会」による消費者事故等の調査についての意見書
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2012年3月2日
日本弁護士連合会
本意見書について
日弁連は、本年2月14日に「消費者安全法の一部を改正する法律案」が衆議院に提出されたことを受け、この度、「消費者事故等の調査体制の整備についての意見書」を取りまとめ、2012年3月5日付けで消費者庁長官、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、内閣府消費者委員会委員長、経済産業大臣、厚生労働大臣、国土交通大臣、警察庁長官、衆議院議長、参議院議長、衆議院議員(消費者問題に関する特別委員会委員)及び参議院議員(消費者問題に関する特別委員会委員)に提出いたしました。
消費者事故等の事故調査機関の設立を内容とする「消費者安全法の一部を改正する法律案」(以下、「改正法案」という。)が2012年2月14日に衆議院に提出され、今国会で審議されます。
消費者事故等について、独立した調査機関の設置は、消費者安全の確保のための喫緊の課題であり、改正法案の早期審議と早期成立が強く望まれますが、さらに、消費者の視点に立った真に独立した公正かつ実効性のある消費者事故等の調査体制を確実に整備するため、以下の点に留意して改正法案成立後の法の運用指針を国会審議で明らかにすべきです。
本意見書の趣旨
1 調査委員会の組織体制について、将来的には委員7名のうち少なくとも2名を常勤とすべきであり、設立当初においても、上記の重要な職務を十二分に果たすことができるよう体制を整備すべきである。
2 調査委員会は、他の行政機関等による調査等の結果を得た場合又は得ることが見込まれる場合においても、その調査等が調査の目的や権限との関係で消費者安全の確保の見地から必要かつ十分な調査であるかを常に迅速・厳格に検証し、必要かつ十分な調査がなされていない場合又は見込まれない場合には、直ちに調査委員会が自ら調査を実施すべきである。
3 調査委員会は、被害者等を含む消費者から生命身体被害の発生又は拡大防止を図るために事故等原因調査等が必要であるとの申出がなされた場合には、他の行政機関等による調査等が継続しあるいは調査等が見込まれる場合であっても、直ちに他の行政機関等による調査等の内容やその実情を含めた必要な検討を行い、消費者安全の確保の見地から必要な事故等原因の究明が困難と思料される場合には広く速やかに自ら調査を実施すべきである。
4 調査委員会には、事故等原因調査等を完了した場合には、生命身体被害の発生又は拡大の防止のため講ずべき施策又は措置について内閣総理大臣に対する勧告が認められているほか、調査の過程を含め広く消費者安全の確保の見地から必要があると認めるときには内閣総理大臣又は関係行政機関の長に意見を述べることが認められているが、内閣総理大臣及び関係行政機関の長は調査委員会の勧告又は意見具申を尊重し速やかに対処すべきである。
5 調査委員会が、消費者安全の確保に必要な消費者事故等の調査を漏れなく実施するには、消費者庁において消費者事故等の情報を確実に一元的に集約する体制を拡充するとともに、調査委員会自らがこの消費者事故等の情報分析に関与し、原因究明が必要な事故を確実に調査対象にできるよう、人的・物的体制を整備すべきである。
6 調査委員会の事故調査と刑事責任追及のための刑事手続が競合する場合の規律等を明確にする必要があり、事故調査のために必要な事故現場等の検証や事故原因関係者からの事情聴取等が十分に実施できるよう、速やかに法制度の整備等を含めた体制を確立すべきである。
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