消費者のための食品安全確保に資する基本的事項の改正を求める意見書

2012年2月17日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

日弁連は、2012年2月17日付けで「消費者のための食品安全確保に資する基本的事項の改正を求める意見書」を取りまとめ、消費者庁長官、厚生労働大臣、農林水産大臣、食品安全委員会委員長、消費者委員会委員長に提出いたしました。

 

本意見書の趣旨

1 食品安全基本法の改正について検討することを「食品安全基本法第21条第1項に規定する基本的事項」の前文に盛り込むべきである。



2 リスク評価について次の点を基本的事項の「食品健康影響評価の実施(法第11条関係)」に盛り込むべきである。



(1) 食品健康影響評価に当たっては、科学的知見に限界があることを認識し、科学的に健康影響を明らかにできない場合は、予防原則に従った評価をするものとする。



(2) 食品健康影響評価に当たっては特定の人口集団(乳児、高齢者、障がいを持つ人など、抵抗力の弱い集団)に対する配慮を重視するものとする。



(3) 食品安全委員会委員の構成について、リスク管理機関から研究費等の助成を受けているなど利益相反関係にある者を除外し、また、消費者の意見を代表する者を含めたものとする。



3 リスク管理について、次の点を基本的事項の「国民の食生活の状況等を考慮し、食品健康影響評価の結果に基づいた施策の策定(法第12条関係)」に盛り込むべきである。



(1) 食品健康影響評価の結果に基づいた施策の実施に当たっても、特定の人口集団(乳児、高齢者、障がいを持つ人など、抵抗力の弱い集団)に対する配慮を重視することとする。



(2) 消費者たる国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下、牛肉(内臓を除く)以外の生食用食肉(内臓含む)の規格基準、こんにゃく入りゼリーの規格基準を速やかに定めることとする。



(3) 食品に対する監視指導を強化するべく、都道府県の食品衛生監視員を増員し、また、食品表示Gメンを食品衛生行政に活用すること、韓国における消費者食品衛生監視員制度を参考にした制度の導入、消費者からの通報制度の法制度化を速やかに図ることとする。



(4) 食品の安全確保のための規格基準が不十分な場合、あるいはない場合に、消費者が、その制定・改正を求めたり、規格基準違反行為を放置している場合、消費者がその是正措置を求めるなど、行政上の措置請求の制度を導入すること



4 リスクコミュニケーションについて、施策に対する消費者からの意見の反映を実効的なものとするため、意見募集の期間や意見交換会等での消費者からの意見陳述時間を十分取り、説明会への参加が多数となる場合は抽選制にするなどの措置を取るものとすることを、基本的事項の「情報及び意見の交換の促進(法第13条関係)」に盛り込むべきである。



5 食品表示について、次の点を基本的事項の「表示制度の適切な運用の確保等(法第18条関係)」に盛り込むべきである。



(1) 食品表示の一元的な規制を定めるに当たっては、消費者に食品の安全を求める権利、食品の選択の自由を求める権利、食品に関する情報について知る権利があることを明記し、食品表示がこれらの権利に資する目的を有することを確認する。



(2) 表示すべき食品表示の項目、内容は、食に関する消費者の権利を確保するために必要かつ十分な内容とする。



6 食品中の放射性物質について、次の点を、基本的事項に盛り込むべきである。



(1) 「食品健康影響評価の実施(法第11条関係)」において、食品の放射性物質の規格基準は、外部被ばく、内部被ばく双方の影響を年1mSv以下にすることを基本として策定し、適宜見直しを行うこととする。



(2) 「国民の食生活の状況等を考慮し、食品健康影響評価の結果に基づいた施策の策定(法第12条関係)」において、食品の放射性物質の検査体制は、対象地域で生産・採取された食品全種を流通前に検査すること、そのため、検査機器等の拡充を国の責任において早急に図るべきこととし、さらに、産地偽装等の防止のため、都道府県の食品衛生監視員による監視指導を強化すべきこととする。



(3) 「表示制度の適切な運用の確保等(法第18条関係)」において、放射性物質についての測定値、測定機器及び検出限界を表示する制度の導入、子どもに対する放射性物質の健康影響への不安を解消するため、食品の基準値の10分の1以下の測定値であったことを表示する任意の表示制度を国において整備し、事業者の利用を図ることとする。



(4) 「情報及び意見の交換の促進(法第13条関係)」において、学校給食においては、学校設置者は、給食に使用される対象地域の食材が、全て放射性物質の検査済みのものであることを確認し、さらに、保護者からの求めがあれば、検査内容を保護者に情報提供することとする。



(5) 「試験研究の体制の整備等(法第16条関係))において、福島県民の被ばく、特に食品摂取の影響を継続的に調査し、また、計画的避難区域内の動植物の放射性物質による影響を調査し、放射性物質の健康影響の研究を行うこととする。



(6) 「国の内外の情報の収集、整理及び活用等(法第17条関係)」において、放射性物質の安全性について消費者に情報提供をする場合は、低線量被ばくについて、殊更安全性を強調することなく、科学的に安全性が確認されていないことを前提に、放射性物質の含まれる食品については、過剰摂取を控えるように注意喚起を促すなど、適切な情報提供を行うこととする。



7 健康食品について、その実態を調査し、表示、広告、販売方法について規制を行うこと、また、消費者の健康を損なうおそれのあるものついては、販売禁止としたり、有害性を除去できるように規格基準を策定することを基本的事項に盛り込むべきである。



8 食中毒事件・食品事故の被害者救済制度の創設を検討し、実施することを基本的事項に盛り込むべきである。

 

(※本文はPDFファイルをご覧ください)