食品中の放射性物質に係る基準値の設定(案)についての意見

2012年2月3日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

2012年1月6日、厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課は「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(食品中の放射性物質に係る基準値の設定)(案)等に関する意見募集」を行いました。



日弁連は、2月3日付けで、この意見募集に対し意見書を提出しました。

 

本意見書の趣旨

1 「一般食品」の基準値の基本的考え方について


一般公衆の被ばく実効線量の限度は1年当たり1mSvと定められているが、この限度値は内部被ばく、外部被ばくを含めた数値である。外部被ばく線量が高い地域の住民にとっては、年間1mSvの限度量を達成するためには、食品摂取による内部被ばく線量を少なくする必要がある。したがって、地域ごとの外部線量を勘案し、福島県など高線量地域についてはより厳格な食品基準値を設定することが望ましい。それが困難であるならば、少なくとも自然放射線における外部被ばく、内部被ばくの平均的割合に基づき内部被ばくとしての限度量を算出し、それに基づいて飲料水や食品ごとの基準値を設定すべきである。



2 基準値を設定する食品区分について



日本人の食品摂取の実態を踏まえた食品区分と基準値設定がなされるべきである。少なくとも、日本人の主食である米については、独立した食品区分を設定し、一般食品よりも厳しい基準値を設定すべきである。



3 「乳児用食品」「牛乳」の基準値について


乳児・幼児については、感受性が成人よりも高いことが指摘されており、それを考慮して「乳児用食品」、「牛乳」につき独立した区分を設定したことは妥当であるが、その基準値を一般食品の2分の1に設定したことは緩きに過ぎるといわなければならない。胎児・子どもについては、放射線感受性が高いこと、体重当たりの摂取量が大人の数倍多いこと、化学物質管理においては10倍の安全係数を適用するのが通例であることなどから、「乳児用食品」及び「牛乳」については、「一般食品」の10分の1の値を食品基準値とすべきである。


4 経過措置について


食品ごとにこのように取扱いが異なることは、かえって市場(流通)の混乱を招きかねず、また風評被害を増大させる恐れもある。したがって、このような経過措置を設けず、全ての食品について同時期に新基準値を適用すべきである。



5 全品検査体制の確立と表示制度の創設


食品の安全性に対する消費者の信頼を確保し、風評被害を回避するためには、食品に含まれる放射性物質のレベルを全ての食品について検査するとともに、その結果を表示する必要がある。その場合、検出限界値も併せて表示しなければ消費者の誤解を招きかねない。したがって、本件食品基準値の見直しに当たっては、全ての食品について食品中の放射性物質の線量を検査する体制を確立するとともに、その結果を検出限界値と併せて表示させる制度を創設すべきである。

 

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