東京電力株式会社に対する「資金の交付」による支援の中止を求める意見書
- 意見書全文(PDFファイル;217KB)
2011年12月15日
日本弁護士連合会
意見書について
日弁連は、2011年12月15日付けで「東京電力株式会社に対する「資金の交付」による支援の中止を求める意見書」を取りまとめ、内閣総理大臣、経済産業大臣他に提出いたしました。
意見書の趣旨
1 現在実施されている、原子力損害賠償支援機構による東京電力に対する「資金の交付」は、法的返済義務がなく、東京電力のバランスシートに負債として計上されない、実質「贈与」である。国は、資金交付の法的意味、すなわち「贈与による東京電力支援」であることについて、国民への説明責任を果たすべきであり、この点についての十分な国民的議論のないままに、資金交付という支援方法を選択するべきではない。したがって、国は、資金交付による支援を中止すべきである。
2 東京電力が積み立てている再処理等積立金を取り崩すことで、2兆円規模の賠償原資を捻出することが可能であるから、東京電力は、実質贈与である資金交付の実施によらず、当面の原子力損害賠償については、資産賠償原則に則り、この積立金を取り崩して賠償を実施するべきである。
3 東京電力は、損害賠償債務を適切に負債として認識すれば、債務超過状態にある。債務超過の企業は、会社更生法等の適用による法的整理を行うのが原則である。したがって、原発事故被害者への損害賠償に支障がないように万全の手立てを講じた上で、法的処理を中心とする、株主、取締役、東京電力に融資を行った金融機関の責任を明確にした処理方法を選択すべきである。
4 国は、東京電力の現有資産、特に送配電網と関連知的財産権等を対価として譲り受ける代わりに、原発事故被害者への損害賠償債務について重畳的債務引受けをすることにより、同社が会社更生等の法的処理手続に付された場合であっても、原発事故被害者への損害賠償の支払に支障が生じないようにするべきである。
5 国は、上記対応によってもなお、東京電力の損害賠償原資が不足し、同社による損害賠償が不十分となる部分については、上限を定めず、直接、損害賠償を行うべきである。
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