放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針骨子案についての意見書
- 意見書全文(PDFファイル;151KB)
2011年10月19日
日本弁護士連合会
意見書について
日弁連は、2011年10月19日付けで「放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針骨子案についての意見書」を取りまとめ、内閣総理大臣、環境大臣、文部科学大臣、東日本大震災復興対策担当大臣等に提出いたしました。
意見書の趣旨
1 除染は放射性物質の量を減らすものではなく、これを場所的移動させるに過ぎず、除染による環境浄化には本質的な限界があることを確認し、かつ、除染によって更なる環境汚染が起きないよう適切な環境防止措置と作業員の被ばく対策をした上で、除染が実施されるべきである。
2 除染特別地域においても、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処の長期的な目標としては、追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト未満となることを目指すべきである。
3 除染実施計画を定める区域(追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以上のうち、除染特別地域以外の区域)のうち、子どもの生活圏においては、第1に、2012年8月末までに、子どもの推定年間追加被ばく線量を年間3ミリシーベルト以下で、かつ、子どもの推定年間被ばく線量を2011年8月末と比べて約60%減少した状態を実現することを目指すとするべきである。第2に、その上で、除染実施計画を定める区域(追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以上のうち、除染特別地域以外の区域)については、2014年3月末までには、子どもの推定年間追加被ばく線量を年間1ミリシーベルト未満とすることを目指すべきである。
また、子どもの推定年間追加被ばく線量及び推定年間被ばく線量を測定する際には、地表面から10cmの空間線量を基本とすべきである。
さらに、一度除染をした場所についても、周辺からの放射性物質による汚染が再度起きる可能性があるので、継続的にモニタリングを実施し、必要に応じて除染を行うべきである。
4 除染特別地域(警戒区域及び計画的避難区域)の除染について
(1) 除染特別地域については、山地の森林部の除染、大量の廃棄物の処理保管、作業者の安全確保など困難な課題があることから、2014年3月末までの一応の除染という目標の実現は困難である。まして、本来、長期的目標とすべき、追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト未満となるのには、相当な長期間を要することを確認すべきである。
(2) 警戒区域及び計画的避難区域においては、本来目標とされるべき、追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト未満となるまでに相当な長期間を要するのであるから、地域指定の解除には極めて慎重であるべきであり、少なくとも、追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト未満となることが明らかとなるまでは、地域指定を解除すべきではない。
(3) 警戒区域及び計画的避難区域からの避難は長期間に及ぶ可能性が高いことを踏まえると、別の場所にコミュニティを含む生活の場を再建することや事業所を再建するなどの方法による被害回復又はコミュニティ・農地漁場・事業所の喪失そのものを賠償する等、コミュニティの維持を含む生活全般の再建、農林水産業・事業活動そのものの再建が早急に可能となる損害賠償の在り方も考えられるべきである。
5 除染実施計画の策定に当たっては、地域住民の参加の下に行われるべきであり、また、関連情報は速やかに公開されるべきである。
6 放射性廃棄物の減量化のための焼却に当たっては、焼却施設の能力・性能について、適切な試験・検証をし、公開と参加の原則に則って、住民の関与の下に具体的な焼却の方針を定めるべきである。
7 除染を実施する事業者の基準を定め、適切な研修や許認可等を受けた事業者のみが除染を実施できるとするべきであり、その基準は、環境汚染防止や作業者の労働安全衛生管理、除染の効果、費用、事業者の技術的経済的能力等の項目について、定めるべきである。
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8 除染実施に必要な費用は、本来は東京電力株式会社が負担すべきであるが、実際には国が責任を持って費用を確保し、また、除染方法についての調査研究も国が責任を持って実施すべきである。
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