改正臓器移植法に対する意見書

2010年5月7日
日本弁護士連合会


本意見書について

日弁連では、2010年5月7日付けで、「改正臓器移植法に対する意見書」をとりまとめ、同月25日付けで厚生労働大臣及び厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会委員長に対して提出しました


本意見書の趣旨

  1. 改正臓器移植法(以下「改正法」という。)の施行にあたって、以下の点が留意されるべきである。


    (1) 臓器提供の「意思がないことを表示」する機会が実質的に保障されていない者に対して脳死判定を行い、脳死状態において臓器摘出をすることは、許されない。臓器提供の「意思がないことを表示」することは広く解すべきであり、「意思がないことを表示」する方法に限定を設けてはならない。


    (2) 家族が十分な説明を受け、正確に理解をしたうえで、承諾したこと及びその事実が文書によって残されることが必要であり、また、そのような話を聞きたくないという家族の「拒否権」も確認しておく必要がある。


    (3) 改正法の施行にあたっては、被虐待児からの臓器提供がなされる危険性が排除されることを前提とすべきである。


    (4) 小児に対する救急医療体制は、いまだ整備されていない。かような現状のままで小児臓器移植を進めるべきではない。


    (5) 親族優先規定は、廃止すべきである。


    (6) 法律上、脳死の定義は「全脳の機能の不可逆的停止」であり、脳死判定基準はこれを前提とした内容とすべきであり、また、「原疾患に対して行いうるすべての適切な治療を行った上で回復の可能性がないこと」などの要件も明記されるべきである。あわせて、子ども独自の脳死判定基準の作成が必要である。


    (7) 改正法の内容の周知を徹底したうえ、実施例の公開と検証を拡充すべきである。


  2. 本来、改めて脳死が人の死であるのかどうかを社会全体が議論し、そのうえで臓器移植法の枠組みを確定させる必要が存する。あわせて、改正法施行後の移植実施例を十分検証し、今後も脳死及び脳死臓器移植のあるべき姿について検討することを求める。

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