水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法に関する意見書

2010年3月18日
日本弁護士連合会


本意見書について

水俣病が公式に発見されてからすでに50年以上が経過したにもかかわらず、いまだ水俣病患者に対する十分な救済策が講じられているとはいえません。多くの患者が身体的にも精神的にも、また、経済的にも苦しみを強いられています。



2009年7月8日第171回通常国会において、水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法(以下「特措法」という。)が成立しましたが、この特措法には様々な問題点が存在します。



日弁連は、2010年3月18日、特措法の解釈運用にあたっての配慮を求めて「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法に関する意見書」を取りまとめ、同月23日、環境省、各政党等に提出しました。


本意見書の趣旨

  1. 環境省は、潜在患者を含めすべての水俣病の患者に対する補償を行うため、具体的に以下の措置を講ずべきである。
    (1) 特措法7条2項の救済対象者確定についての3年の期間はあくまでも目途であり、努力目標を定めた規定である。これを経過した後で補償を受けるべきことが明らかとなった被害者を切り捨てることのないよう方針を定めること。
    (2) 居住地域や出生時期などでの限定を設けないこと。
    (3) 特措法5条1項に規定する「四肢末梢優位の感覚障害を有する者及び全身性の感覚障害を有する者その他の四肢末梢優位の感覚障害に準ずる者」に該当するかどうかは民間専門医の診断を十分に尊重して方針を決定し、過度に症状を限定しないこと、とりわけ胎児性世代、小児性世代の患者を切り捨てないように配慮すること。
    (4) 国は、特措法37条に定める「調査研究」の一環として、「救済措置の対象者を確定」(特措法7条2項)するまでに、不知火海沿岸全域での住民の一斉検診を実施すること。


  2. 国、県(熊本県、鹿児島県、新潟県)、原因企業(チッソ株式会社、昭和電工株式会社)は、水俣病の患者に対する補償の内容として関西訴訟最高裁判決の基準を参考にするなど患者の被害の実態に見合った正当な補償を行うべきである。


  3. 原因企業(チッソ株式会社、昭和電工株式会社)のみならず、国、県(熊本県、鹿児島県、新潟県)の法的責任に基づいて水俣病被害者に対する救済、水俣病の解決、補償がなされるべきである。


  4.  分社化は一方では最終的にはチッソの消滅を認めながら、他方新会社が水俣病関連の債務を引き継がずに責任を免れるような仕組みになっていることに鑑み、環境省、熊本県、チッソ株式会社は分社化に関する条項の適用にあたっては、すべての水俣病被害者に対する補償を実現できるようにその条項の運用を厳格に行うべきである。



(※本文はPDFファイルをご覧下さい)