最高裁第3回「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」に対する意見書

2009年9月17日
日本弁護士連合会


本意見書について

本意見書は、2009年7月10日に最高裁判所から公表された、第3回の「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(以下「第3回報告書」という。)に対し、日弁連としての意見を提出するものである。


第3回報告書は、民事裁判に関して全国で実施された弁護士ヒアリングの結果を踏まえて、実証的な要因分析がなされており、全国の弁護士が共通して持つ問題意識が報告書の内容に反映している。また「要因となっている可能性がある」との表現ながら、裁判所自身が、物的人的態勢の検証を意識したことは大いに注目される。


そこで、第3回報告書の分析を基本的に評価するとともに、問題意識を共有し、基盤整備の促進を提言する重要な機会と捉え、意見の基調としている。


本意見書の趣旨

「第1 はじめに」

長期化要因について、裁判迅速化法を基盤整備法と位置づける観点から、今後の長期化要因の分析過程では迅速化を図るだけでなく、審理の適正充実や、制度の改善等にも配慮すべきことを冒頭で明確に指摘した。


「第2 民事事件」

第3回報告書は、民事事件の概況や一般的な長期化要因を、大別して(1)争点整理の長期化、(2)証拠の偏在や収集困難性、(3)専門的知見を要する事案、(4)裁判所、弁護士の執務態勢に求めた。そこで、各要因について、制度改正や物的人的態勢の拡充を含めた施策の必要性を述べた。


「第3 専門的知見を要する訴訟」

専門的知見を要する訴訟について、医事、建築、知的財産、労働の各類型について意見を述べている。第3回報告書は、専門部の活用、管轄集中的な解決策を比較的積極評価していると見受けられることから、国民の裁判を受ける権利の実質的保障のためには、過度に依拠するべきではないとの観点から意見を述べている。


「第4 刑事事件」

刑事事件は迅速化が実現しているとの認識のもと、今後は適正充実の観点から、裁判員裁判や公判前整理手続の運用状況について、詳細なデータ分析を行い、弁護人の予定主張明示義務の運用状況、検察官による証拠開示の程度など、被告人の防御権が十分に保障されているかという視点で検証を行うべきことを指摘する。


「第5 家事事件」

遺産分割事件の長期化要因に言及され、今後の検証対象とされたことにつき、前提問題、付随問題が軽視・回避されたり、家庭裁判所における証拠収集(調査嘱託など)が制限的に運用されたりしている懸念を指摘し、裁判所の態勢充実や証拠収集方法の整備に向けた検証の必要性を指摘する。


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