「中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)」に対する意見書

2009年7月16日
日本弁護士連合会


本提言について

中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会は、2009年4月17日に「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)」を発表しました。


日弁連では、同報告に対する意見書を取りまとめ、2009年7月22日、文部科学省及び中央教育審議会に提出しました。


本提言の趣旨

「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)」は,法科大学院の質の向上をめざし,教育の質の向上のために到達目標を策定すべきこと,一定の定員削減を想定することなどにおいて,基本的に評価することができます。


しかし,その具体的な改善方策として掲げられたものには,法科大学院の基本的な理念を損なうことが懸念されるものがあり,特に以下の点について強く配慮を求めます。


  1. 法科大学院のカリキュラムの改善を図る場合には,未修者3年課程を原則とし,理論と実務の架橋や展開・先端科目等の豊かな教育を通じて多様な人材の輩出を目指す法科大学院の基本理念が揺らぐことがあってはならない。
  2. 基礎的な法理論教育の充実をはかる方法として,安易に法律基本科目の単位数を増大させるのではなく,法律実務基礎科目や臨床科目との有機的連携を図りながら,教育内容の厳選や教材・教育技法の飛躍的向上など実質的かつ抜本的な改善が図られるべきである。
  3. 司法試験の競争が激化している現在の状況のもとでは,法律基本科目の単位数の増加を可能にすることで,カリキュラムの過密化をもたらし,旧制度下のような知識偏重の弊害を再燃させることが強く懸念されるので,その運用においては,単位数増加が原則化することがないよう特に留意すべきである。
  4. 学生の入学定員については,大都市の大規模校の削減を先行して強く推進すべきであり,地方小規模校の扱いについては地域的適正配置の見地から十分慎重な配慮がなされるべきである。
  5. 本報告に盛られた改善策のフォローアップにあたっては,法科大学院の自主性を損なうことのないよう,また認証評価の仕組みが形骸化することがないよう十分配慮されるべきである。

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