改正貸金業法の早期完全施行に向けたセーフティネット貸付制度の充実を求める意見書

2009年6月18日
日本弁護士連合会


本意見書について

本意見書は、2009年6月24日付けで内閣総理大臣・消費者行政推進担当大臣・厚生労働大臣・衆参両院議長・金融庁・各政党・多重債務問題に取り組む国会議員・全国知事会・全国町村会・全国社会福祉協議会等に提出しました。


意見書の趣旨

2007年に政府の多重債務者対策本部が策定した「多重債務問題改善プログラム」においては、セーフティネット貸付制度の必要性が謳われ、改正貸金業法等の完全施行に向けてその実現が求められているところ、日弁連は、生活福祉資金貸付制度の積極的活用を図るための抜本的改正及び同貸付制度の対象とならない上記資金需要者に対する新たな制度の仕組みについて意見を述べる。


第1 意見の趣旨

1 低所得者向けの貸付制度の中心である「生活福祉資金貸付制度」について

  1. 「生活福祉資金貸付制度要綱」を次の様に改正するべきである。
    (1) 連帯保証人を貸付の条件としないこと。
    (2) 緊急小口資金貸付の貸付要件を緩和し、それを周知すること。
    (3) 多重債務者が排除されないよう要綱に明記すること。
    (4) 委託先を市町村社会福祉協議会に限定しないこと。
  2. 運用を次の様に改善するべきである。
    (1) 貸付原資及び貸倒引当金の積み増しを行い、多くの人が利用でき、さらに延滞金については償却措置を行えるようにすること。
    (2) 本制度の十分な広報を行うこと。
    (3) 申込みから貸付に至るまでの期間を短縮するよう手続きを改めること。
    (4) 申込みに際し過度に書類の提出を求めることのないようにすること。
    (5) 委託先である市町村社会福祉協議会への事務委託費を増額し、職員の研修を充実させること。
    (6) 国(厚生労働省)は本制度の実施主体である都道府県社会福祉協議会並びに事業委託先である市町村社会福祉協議会の運営状況を把握し、生活福祉資金貸付制度要綱、通知、問答集等の周知、徹底を図ること。
    (7) 本制度の貸付対象である「低所得世帯」の基準が現行の運用上市町村民税非課税世帯程度とされているのを改め、貸付対象となる範囲を拡大すること。

2 信用情報機関に事故情報の登録がされている資金需要者の生活再建を促すため、国(厚生労働省)は既存の自治体提携社会福祉資金貸付制度の抜本改正、あるいは新制度を創設し、生活資金の貸付に応える仕組みを整備すべきである。

第2 意見の理由

公的融資制度である生活福祉資金貸付制度は、これまで使い勝手の悪さが指摘され積極的に利用されていなかったが、セーフティネット貸付制度として位置づけ、積極的な活用を図るべきである。利用されない理由として連帯保証人を付けなければならないことや、延滞金の割合が多いこと、申込みから貸付まで時間がかかること、窓口で過度に資料の提出を求められること、多重債務者には貸さないこと、緊急小口資金貸付(上限10万円)の要件が過度に厳格に運用されていること、実施主体である都道府県社会福祉協議会や直接の窓口となる市町村社会福祉協議会が「生活福祉資金貸付制度要綱」や厚生労働省からの通知などを遵守しない運用がなされているなどの問題点があることから、これらについて生活福祉資金貸付制度要綱の改訂と同制度の運用の改善が必要である。


また、生活福祉資金貸付制度は、低所得世帯であることが貸付要件であるが、それ以上の収入のある者で信用情報機関に事故情報の登録がされている資金需要者に対する貸付の仕組みも必要である。現行の自治体提携の協調融資制度の貸付対象者を事故情報登録者にも拡大することや、新たに国が公的資金を拠出し、これを預託金とした協調融資制度、あるいは、貸し倒れが生じた場合の補填資金とするなどして、金融機関あるいは地域の団体と連携した仕組みを構築すべきである。

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