消費者教育推進法の制定を求める意見書

2009年2月19日
日本弁護士連合会


本意見書について

本意見書は、2009年2月24日に内閣府、文部科学省、金融庁、各政党宛に提出いたしました。


意見の趣旨

消費者教育・啓発をより推進するため、速やかに下記の内容の消費者教育推進法(仮称)を制定すべきである。


  1. 社会における取引の多様化・複雑化に伴って消費者と事業者間に情報の質量・交渉力の圧倒的な格差の存在という構造的問題に起因して様々な消費者トラブルが発生している。この実情を前提とし、消費者が自立した主体として消費生活を営む自由を享受し、自己実現と社会のあり様を消費者・生活者の視点から望ましい姿に変えるために「消費者市民」として主体的に行動できる資質を獲得することが消費社会の健全な発展と上記構造的問題による消費者トラブルの防止又は紛争の適正・公平な解決のために必要不可欠である。その資質を獲得するプロセスにおいて消費者教育が重要な役割を担い得ることに鑑み、この法律は、消費者教育の基本理念を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、消費者教育の施策の基本となる事項を定めることにより、消費者教育に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって「消費者市民社会」の実現に寄与することを目的とする。

  2. 消費者教育を受けることは国民の権利であることを明記するとともに、消費者教育の基本理念を以下のとおり定める。

    (1) 消費者と事業者との間の情報の質、量及び交渉力等の格差の存在を前提として、自らの権利・利益を守ることができる知識及び情報を収集し、これを分析・判断する消費者の能力を育むものであること

    (2) 消費者が、単なる商品・サービスの受け手という受動的態度にとどまらず自らの自己実現と社会のあり様を消費者・生活者の視点から望ましい姿に変えるために能動的・主体的態度をとることを助長するものであること

    (3) 消費者が環境や発展途上国の経済に与える影響など、多角的視点を消費者に提供するものであること

    (4) 消費者が、幼児から高齢者にいたる消費者の生涯にわたって、学校、地域、家庭、職域その他の様々な生活の場面において教育を受ける機会を保障するものであること

  3. 国及び地方公共団体は、上記1に定める目的及び上記2に定める基本理念にのっとり、消費者教育の推進に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、実施すべき責務を負う。

  4. 消費者行政新組織を、消費者教育の推進に関する総合的かつ計画的な施策を実施する上で牽引車的な役割を果たすものと位置付け、必要な権限を与える。

  5. 消費者の自己責任論が安易に強調されることによって、消費者教育の基本理念が没却されることのないよう「消費者の責務」に関する定めはおかない。

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