知的財産戦略に関する政策レビュー及び第3期基本方針の策定に関する意見書

2008年12月25日
日本弁護士連合会


本意見書について

本意見書は、2008年12月25日、知的財産戦略本部長宛に提出しました。


意見の趣旨

  1. 知的財産高等裁判所が創立される際に検討された、同裁判所に期待される事項及び危惧される事項について、これが現時点でどのように評価されるべきであるのかを、とりわけ、知的財産高等裁判所という特殊な裁判所制度を創出したことに基づく司法制度上の観点、及び同高等裁判所を中心とする知的財産権侵害事案の審理における運用面で知的財産権が正当に保護されているのかとの観点において、具体的に検証すべきである。

    知的財産高等裁判所における取扱い事例は、決して多量ではないから、個別の事案の性格に基づく影響が強く反映すると考えられ、知的財産高等裁判所が取り扱った事案に関して種々の数値を集計するだけでは統計的に有意な事実を把握することはできないと言うべきである。


    そのため、上記の検証に当たっては、知的財産高等裁判所を利用するユーザーへのアンケート等による調査、既済事件の事例分析などが必要であり、その上で、知的財産高等裁判所の司法制度としての評価及び知的財産権の正当な保護が充分であるか否かを評価すべきであると思料する。


  2. 知的財産権侵害訴訟の東京地方裁判所及び大阪地方裁判所への専属管轄の規定により知的財産権侵害事件を東京及び大阪に集中させたことが、他の地域に所在する特許権者に対する権利行使のコスト増大をもたらしていないか、コスト負担増が特許権の正当な権利行使を障害していないかを、現時点で検証すべきである。


  3. 知的財産権の保護は、民事訴訟による侵害の抑止を第一とすべきであり、刑事規制はきわめて悪質な侵害行為のみを対象とすべきである。

(※本文はPDFファイルをご覧下さい)