「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」に関する意見書
- 意見書全文(PDF形式・31KB)
2008年12月19日
日本弁護士連合会
本意見書について
2008年6月、国会では議員立法として「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」が成立しました。
本法は、定義規定(1章)のほか、インターネット青少年有害情報対策(2章)、インターネットの適切な利用に関する教育及び啓発活動(3章)、フィルタリングサービスの提供義務(4章)、インターネットの適切な利用に関する活動を行う民間団体(5章)に関し規定を置いており、特に青少年が携帯電話端末を利用するインターネット接続提供契約をする場合、原則としてフィルタリングサービス利用を義務づけたことが注目されています。
しかし、フィルタリングの意義や仕組み、必要性、問題点、意識的な選択の重要性などに関する情報が広く国民に十分に提供されないまま、フィルタリングによって過度のアクセス制限が行われれば、青少年の表現の自由や知る権利(憲法21条)が脅かされます。また、本法は、民間における自主的・主体的取組を尊重しなければならないことを基本的理念として定めているものの(本法3条)、本法の解釈、運用によっては、公権力の不当な介入が懸念されます。
そこで、あるべきフィルタリングに関する意見及び本法の解釈、運用について意見をとりまとめました。
意見書の趣旨
- 表現の自由、知る権利の保障の観点から(憲法21条)、フィルタリングは、利用者の自主的な判断に基づき、多様な選択肢の中から選択できるような仕組みでなければならない。従って、関連事業者は、このような仕組みの早期実現に努めなければならない。
また、「青少年が安全に安心してインター ネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(以下「本法」という。)17条は、青少年が使用する携帯端末については、保護者がフィルタリングサービスを利用しない旨を申し出ない限り、フィルタリングサービス提供を条件とした契約を締結しなければならないとしているが、携帯電話事業者は、青少年のために携帯電話契約を締結する際、保護者に対し、フィルタリングの意義、内容について十分に説明するとともに、有害でない情報までもが閲覧制限されてしまうという問題があること等、フィルタリングに関する情報提供をしなければならない。
- 本法が基本的理念とする民間の自主的かつ主体的な取組の尊重(本法3条3項)の観点から、アクセス制限される有害情報の基準、選定についての判断は、民間の自主的判断と利用者の選択に委ねられるべきであり、公権力がこれに実質的な影響を与えるような如何なる関与もしてはならない。政府がインターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議(本法8条)やフィルタリング推進機関(本法24条)への関与を通じてこの判断に実質的な影響を与えることも許されない。
- 国及び自治体は、本法第3章に定めるインターネットの適切な利用に関する教育及び啓発活動を積極的に推進すべきであり、早急にフィルタリングに関する情報を提供するとともに、青少年の情報リテラシーを育成する施策を講じなければならない。
(※本文はPDFファイルをご覧下さい)